社会学評論
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初職非正規雇用による精神的健康への悪影響の加齢に伴う変化
―初職開始年による age trajectory の違い―
鳥居 勇気
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2024 年 75 巻 3 号 p. 239-254

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抄録

本研究の目的は,初職非正規雇用労働による精神的健康への影響が加齢とともに変化するのかと,加齢による格差の変化傾向は初職開始年によって異なるのかを明らかにすることである.日本では,初職が非正規雇用であると正社員への転職が困難であるとする「罠シナリオ」が強調され,貧困や精神的健康などとの関連も指摘されている.しかし,欧州の健康研究では,人生初期時点での格差は加齢とともに拡大すると主張されているが,初職の雇用形態による精神的健康の格差についても同様であるかについてはほとんど議論されていない.また,初職非正規雇用をとりまく状況は年々変化しているが,それに応じて初職非正規雇用による精神的健康への影響も変化しているかについても明らかにされていない.以上の課題を踏まえて,本研究では,東大社研若年・壮年パネル調査データを用いて成長曲線モデルを推定した.分析の結果,初職開始年が2000年以降の場合において,男性の精神的健康の格差は加齢とともに拡大する傾向にある一方で,女性の精神的健康の格差は若年期に最大化することが明らかになった.また,婚姻・現在の雇用形態・年収を統制した場合,男性は初職の効果が部分的に減少したが,女性の場合はわずかに効果が上昇した.以上の結果を踏まえて,先行研究が扱ってこなかった,初職非正規雇用による不利益が存在する可能性や,日本の経済面での男女格差について,考察として論じた.

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