社会学評論
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階層構造における人員配分原理としての競争
内藤 考至
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1978 年 29 巻 1 号 p. 35-49

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抄録

階層構造の研究には大きく分けて、資源の配分・分配、分配の正当性 (分配基準) 、人員配分の三つの側面が考えられられるが、本稿はその一つである人員配分に論及したものである。これまでの人員配分論について、内在的に論理整合性の追求じたいを目的とするというよりも、現代社会の種々のアノミックな現象を理解し解明するために、その構造的原因を探るための一助にしようとしたものである、その意味で、意図としては現実により傾斜している。
競争はごくありふれた、ごく一般的・日常的な社会関係である。それだけにそれはより重要な現象であるが、あまりに一般的であるため、空気の如く当然のこととして感じられているのかもしれない。社会学の分野では、古くは形式社会学において社会化の二形式として論及されたが、現在では部分的には触れられても、競争じたいについて論及したものは僅かである。
歴史的には、競争は近代社会の重要な構成原理であり、社会構造への人員配分原理としての側面をもっていた。現代においては、その機能はますます増大している。しかし、具体的研究としては、階層構造への人員配分原理としてはもっぱら社会移動が扱われ、階層と移動という型で研究が蓄積されてきた。社会移動と競争とは基本的には異なる別種の社会関係である。そこで、階層構造への人員配分原理として競争を位置づけ、個人の選好の問題としてではなく、社会構造形成の内的過程として競争を捉えようとした。さらに、現代的競争の特質を資源の稀少性ではなく、「豊かな社会」におけるハイラーキー構造の存在に求め、競争を通して将来の社会像を探ろうとしたものである。

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