社会学評論
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新明社会学史と社会学思想
横山 寧夫
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1985 年 36 巻 2 号 p. 173-182,282

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抄録
新明正道はわが国において最初に本格的な社会学史を書くに相応しい該博な知識の所有者であった。たしかに彼の社会学史は、夙に構想された独自な理論的立場を基礎にして広く世界の社会学理論の発展を通観し、均衡よくまとめられたものであるが、社会学理論と社会思想を交錯させて理解しようとする彼の「社会学史の方法」(sociological thought)は、私のみるところでは、その著作の中であまり成功しているとは云い難いように思われる。この方法論的立場は欧米で最近注目されている「社会学思想」の概念に近く、晩年になって彼の中に次第に固められてきたようであるが、しかしこの立場を固執しようとすれば、彼が以前に学説史研究の中で強く主張してきた議論 (とくにマンハイム批判など) と憧着してくることは避けがたい。新明の長い学的生涯の発展過程の中で理論や立場のアンビバレンツがあっても不思議ではないが。ここに述べようとする諸点は彼の知識社会学的立場と体系的理論の関係、あるいは新明とマルキシズムとの関係を考えるうえに重要なポイントとなるのではないかと思われる。
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