社会学評論
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戦後思想と社会学理論
現象学的視座からみた〈主観性〉をめぐる問い
西原 和久
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キーワード: 主観性, 現象学, 社会学理論
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1996 年 47 巻 1 号 p. 4-17

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抄録
本稿は, 戦後日本の哲学思想と社会学理論との関係に照準しながら戦後 50年を振り返り, 現代の日本社会学の理論的課題に論及するものである。ただし, ここでの議論の視座となるのは1960-70年代前半 (以下「60年代」と称する。より正確には本論で言及する) の現象学的思潮を中心とする哲学思想である。そこに視軸をとるのは, 戦後50年の時間幅のなかでその時期の知の変動がひとつの転換点であったとみるからだが, もちろんこの視軸を社会学全般にまで一般化して論じるつもりはない。ここでの議論が有効なのは, おそらくわれわれの知のまなざしの根底にあるパラダイムをめぐる論点に関してのみである。つまり, 社会学方法論をも含めた多様な領域にわたり社会学が関わらざるをえない〈主観性〉をめぐる問いの歴史が本稿で論じられる。
〈主観性〉をめぐる問いは, 「主体性論争」などにみられるように戦後すぐから論じられ, 「60年代」には「知の地殻変動」ともいうべき形で哲学思想においてドラスティックに変化し始め, 80年代の統合的な社会学理論をへて, 今日では形を変えつつ社会学理論においても基本的な視点の対立状態のなかにあるといえる。その問いを戦後50年を通観しつつ浮き立たせ, 社会学理論の今日的課題を明示するのが本稿の作業である。社会的行為の基底を問うという社会学理論の課題が本稿全体を通して示されることになる。
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