抄録
電子メディアの爆発的な普及にともなって, 電子メディア上に構成されるバーチャルコミュニティが新たな「社会的現実」となりつつある。本稿では, バーチャルコミュニティを我々にとっての「自明の現実」である近代システムと比較することによって, 改めて近代システムを検討し, 同時にバーチャルコミュニティの意義と課題を抽出する。結論として, バーチャルコミュニティは, 近代システムの論理を貫徹しようとする意思によって生まれてきたものであるが, その結果, 近代システムの枠組みを無効化し, 近代システムの基盤となる自律的個人のアイデンティティを変容させる可能性がある。新たに発生する問題として, 多重自己アイデンティティおよび文化衝突の可能性がある。