社会学評論
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法廷における犯行動機の構成と被害者のカテゴリー化
「道頓堀野宿者殺人事件」を事例として
狩谷 あゆみ
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1998 年 49 巻 1 号 p. 97-109

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抄録

本稿の目的は, 1995年に起きた「道頓堀野宿者殺人事件」に関する法廷において, 被告の犯行動機の構成と, 被害者のカテゴリー化とがなされていく相互作用のプロセスを明らかにすることである。法廷において, 犯行動機の構成と被害者のカテゴリー化とは, 一方の構成が他方の構成を促すという形で相互に並行して進められていく。
本事件は, 被害者が「浮浪者/ホームレス」であることを前提として進められた点にその特徴を持つ。法廷においては, このカテゴリーにそなわった両義牲 (逸脱者/弱者) が, 検察, 弁護双方による犯行動機の構成戦略として用いられた。
犯行動機を構成していくプロセスで争点となっていたのは, 被告自身が「かねてから浮浪者/ホームレスに嫌悪感を抱いていた」という点である。被告の犯行動機は, 「被害者を川へ投げ込んだ」という行為からではなく, 被告自身の「いじめられた経験」, 被告が日頃から抱いていた「浮浪者/ホームレスに対する苛立ち」, 被告が日頃から行っていた「浮浪者/ホームレスに対するいじめ」から引き出され, 構成されていった。同時に, 被害者は「浮浪者/ホームレス」であることを前提に, 「無抵抗な弱者」として一般化され, カテゴリー化されていった。

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