社会学評論
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大規模公共施設における公共性と環境正義
空港不法占拠地区をめぐって
金菱 清
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2001 年 52 巻 3 号 p. 413-429

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抄録

本稿は大阪国際空港の国有地にあるM不法占拠地区を事例に, 公共空間をめぐる正義の構築過程を明らかにする.公共空間の理念に矛盾する私的空間との結びつきを分析することを通じて, 私権を排除する公共性のありかたを相対化するねらいがある.その際, 資源のうえで圧倒的に劣勢な立場に立たされているマイノリティの「正義」を分析対象に据え, 国と地方公共団体が捉える公共空間のズレから, 私的な生活を保障するための社会空間がどのように生まれてくるのかを論じる.
具体的には, 公共性の討議の場に参加できない人々の「声」を, 当事者である住民が差別や貧困を背負った「社会的弱者」として地方公共団体に捉えられることにより, 国の定義とは異なる水準での社会的空間が不法占拠地区に生み出される.このことが, 結果として, 公共空間のせめぎ合いのなかで人々の領域支配を国に認知させることになる.

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