社会学評論
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国際移民におけるメゾレベルの位置づけ
マクロ-ミクロモデルをこえて
樋口 直人
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2002 年 52 巻 4 号 p. 558-572

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抄録

本稿ではブラジルから日本への出稼ぎの事例を素材として, 国際移民におけるマクロ-ミクロリンクを検討する.マクロな労働力需給の不均衡とミクロな行為者の動機を国際移民の説明変数とするアプローチは, 以下の2つの理由により現実の説明として不十分である. (1) 労働力需給の不均衡から予測されるほどには移民が発生しない一方で, 特定の地域から多数の移民が生じる要因も説明できない. (2) ブラジルから日本への出稼ぎ現象は, マクロな構造変動によって生じたが, その後マクロ要因からは相当程度独立した人の流れを生み出した.こうした現実を説明するには, メゾレベルを重視する移住システム論の導入が有効性を発揮する.マクロな機会はミクロな行為者に直接認知されるのではなく, メゾである移住システムの媒介を経て初めて, マクロな構造的条件がミクロな行為を生み出す.今後の方向として, マクロ-メゾ-ミクロという3項を明示的に取り込んだモデルを彫琢し, メゾレベルのバリエーションに着目することで現実の多様性を解明することができるのではないか.

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