社会学評論
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構造化理論と資本主義
レギュラシオン理論との関連から
藤嶋 康隆
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2002 年 53 巻 2 号 p. 19-35

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抄録

本稿の目的は, 資本主義がどうして崩壊せずに存続しているのかを明らかにすることにある.そのためにまず, レギュラシオン理論の社会理論化を行おうとしているジェソップの理論に着目した.この理論は資本主義が一定の規則性を持って再生産されていると同時に, 資本主義的制度が変動していくという現実を説明する際に, 諸構造と構造の区別を行わなかったために, 制度概念について十分に理論化できなかった.そこで本稿では, ギデンズの構造化理論の研究を分析した.ギデンズの構造化理論の研究は構造主義的伝統において明らかでなかった諸構造と構造とを区別し, 主体による構造の利用と, マトリックスとしての諸構造の維持という論理枠組みを生産している.制度は主体による構造の利用によってマトリックスとしての諸構造を破壊しない範囲で変動する.
本稿ではさらにヒルシュやゲールグのレギュラシオン理論の研究を分析した.彼らはギデンズの構造化理論における構造原理の概念を摂取している.
本稿の最終部では, ヒルシュやゲールグが構造化理論において発展させることのできなかった資本主義の将来展望を検討した.その際, 重要な概念はユートピア的現実主義という概念である.ギデンズがユートピア的現実主義という概念のもとで構想した第三の道を構造原理の一つである民主主義によっていかに実現していくかが今後の課題となる.

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