社会学評論
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社会的ジレンマ状況における資源分配
集団規模と平等基準
石田 淳
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2006 年 56 巻 4 号 p. 882-897

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抄録

本稿の目的は, 社会的ジレンマ状況を資源分配とその社会的評価という観点から分析し, 社会的ジレンマ状況に対する新たな解釈可能性を提示することにある.このことは, これまで社会的ジレンマ研究の前提であった合理的選択理論の枠組みを一旦カッコに入れるということを意味する.その上で, 社会的ジレンマ状況における社会的平等性という評価基準が, 集団規模の増大によってどのような影響を受けるのか, ということに注目する.
分析の結果, ある条件のもとでは, 集団規模の増大が社会的ジレンマ状況における社会的平等性を全体的に改善し, さらに資源 (利得) の社会的総和を全体的に改善することが明らかになった.一方で, 集団規模の増大はパレート最適な社会状態の割合を減少させる.この結果より, 社会的平等性を考慮するプレーヤーを仮定した場合, 集団規模の増大はプレーヤーの非協力行動に対する心理的障壁を構造的に軽減させ, 全員非協力状態への移行を容易にする働きをもつものと解釈することができる.つまり, 集団規模の増大は「ジレンマの激しさ」をますます高める作用を持つ.こうした結果の解釈は, 「オルソン問題」についての1つの解答の可能性を示唆するものである.

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