2022 年 39 巻 2 号 p. 153-159
急性呼吸促拍症候群(acute respiratory distress syndrome:ARDS)は、肺傷害によって、背側に虚脱肺が分布し、腹側に含気領域が縮小した“Baby Lung”と呼ばれる状態を呈している。肺胞リクルートメントによって、通気されている肺領域を増やすことで人工呼吸器関連肺傷害(ventilator induced lung injury:VILI)のリスク低下が期待されているが、リクルートメント+高い呼気終末陽圧(PEEP)によるOpen Lug戦略は、予後の改善を示していない。ARDS患者の肺胞リクルートメントに対する反応性、すなわち肺リクルータビリティは患者によって異なることが知られており、リクルータビリティが低い患者に対する高いPEEPは有害である可能性が指摘されている。肺リクルータビリティは、通気が回復した肺重量/全肺重量のCT解析で定義されたが、ARDSの人工呼吸患者のCT評価はリスクがあり、日常臨床の適用は難しい。ベッドサイドで使用可能な評価方法として、Pressure-Volume curve(PV curve)、recruitment-to-inflation ratio(R/I比)について概要を紹介し、ARDS患者への個別化換気戦略につながりうる肺リクルータビリティの基礎知識を解説する。