抄録
肺がん患者はがんの進行に伴って,呼吸困難を感じて不安や死への恐怖を訴えることが多くなる.エンド・オブ・ライフにおけるケアは,適切な薬剤の使用と,呼吸困難に伴う「息苦しさ」の訴えをしっかりと聞き,思いや体験を聴くことから始まる.呼吸困難が和らぐまでは患者を一人にしないことが大切である.呼吸困難は,疼痛よりも日常生活への支障の度合いが高く,サポートやケアが必要な症状である.にもかかわらず,患者の多くは「横になっている時間が多いから」「このところ歩いていないから」など,病状の進行に対する否認も相まって自分自身の生活習慣がその原因であると捉えてしまうこともよくある.そのため医療者が病態や症状を適切に説明し理解を促すことも大切である.さらに病状が増悪すると,呼吸困難緩和のための鎮静が必要となる場合もあり,患者と家族へのインフォームド・コンセントとチームアプローチが重要となる.