研究 技術 計画
Online ISSN : 2432-7123
Print ISSN : 0914-7020
技術のスピルオーバーに視点を据えた産業の技術構造の変遷に関する実証分析
渡辺 千仭許 光仁馬場 啓介
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2004 年 17 巻 3_4 号 p. 163-178

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抄録
企業がとる経営戦略の一つに多角化経営戦略がある。これは,既存製品市場が成熟した場合に新市場への進出が必要となることや,単一の製品に依存していては突然の経営環境の変化に生き残れないため,リスクの分散が必要となるなどの意味で重要な戦略となっている。企業が多角化戦略を取って事業内容を多角化させる場合,技術の広がり,すなわち研究開発の広がりが必要となる。しかしながら,近年は研究開発の停滞が見られるため,効果的な多角化が必要不可欠である。本論文では日本の製造業13業種を対象に,1970年から1997年における研究開発活動の多角化がもたらした技術構造の変遷に関する分析を行った。この結果,研究開発の多角化が産業の技術構造を均質化させていることが明らかになった。また,その動きを詳細に見れば,1970年代には化学を中心とした幾つかの産業のグループ(以下,化学クラスター)と電気機械を中心とした幾つかの産業のグループ(以下,電機クラスター)の二つが存在したが,時間の経過とともに両クラスターが接近していく様子が確認された。また,初めは化学クラスターに属していた幾つかの産業が電機クラスターに移動していくことが観察された。さらに,以上の技術構造の変化が生産性に及ぼす影響をみるために,全要素生産性(TFP)を技術の直接的影響,技術の間接的影響,投入財の価格変化を通した技術の波及効果の影響,最終需要の影響に分解した。分析の結果,過度の技術の多角化が産業の技術構造を必要以上に均質化させ,それが生産性に悪影響を与えていることが確認された。
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2004 研究イノベーション学会
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