研究 技術 計画
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巻頭言
  • 遠山 亮子
    原稿種別: 巻頭言
    2026 年41 巻1 号 p. 2-6
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/04/01
    ジャーナル フリー

    Knowledge transfer in various workplaces has been gaining attention in recent years, due to a declining birthrate and aging population, knowledge transfer, especially tacit knowledge transfer, is becoming an increasing challenge. Also, advances in technologies such as sensing and AI are bringing about new solutions to knowledge transfer challenges, such as the conversion of tacit knowledge into explicit knowledge. This paper explains the process of transfer and creation of new knowledge based on transferred knowledge, using knowledge creation theory.

    The transfer and creation of knowledge utilizes past knowledge for the future and is an essential process for the development of society and organizations, and what drives people to engage in this process is the realization of the ideal of the common good.

特集 それぞれの現場における知の継承
  • 安田 剛規
    原稿種別: 特集
    2026 年41 巻1 号 p. 7-11
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/04/01
    ジャーナル 認証あり

    Since the emergence of life, knowledge succession has served as a fundamental mechanism for survival and evolution. While biological knowledge is transmitted through genetic inheritance, human societies have developed increasingly sophisticated modes of knowledge transfer—from oral traditions and written records to digital technologies. In contemporary Japan, declining birth rates, population aging, and increasing labor mobility have resulted in persistent workforce shortages and higher employee turnover. Consequently, traditional long-term, one-on-one on-the-job training (OJT), which historically served as the primary mechanism for transmitting tacit knowledge, has become increasingly difficult to sustain. Organizations across diverse sectors are therefore striving to develop new institutional and technological mechanisms that ensure the continuity and evolution of knowledge beyond individual mentorship relationships.

    This special issue explores knowledge succession not merely as the preservation of past experience, but as a dynamic process that generates new value through interaction, reinterpretation, and recombination. The nine contributions presented here examine diverse domains—including manufacturing, family businesses, M&A integration, nuclear research, elderly care, education, and information technology—and reveal how knowledge is created, shared, transformed, and sustained under changing conditions.

    Several articles highlight the role of digital technologies, such as AI systems, ontologies, and data-driven platforms, in externalizing tacit knowledge and facilitating its transfer across organizational and generational boundaries. At the same time, other contributions emphasize the enduring importance of human factors—organizational culture, shared context, interpersonal trust, and narrative communication—in enabling deeper understanding and effective succession.

    Furthermore, this issue addresses the temporal dimension of knowledge succession. Studies of long-standing institutions and family enterprises demonstrate how enduring principles and traditions can be reinterpreted to support innovation rather than constrain it. Across these varied contexts, knowledge succession emerges as a multifaceted process involving socialization, articulation, systematization, and internalization.

    Collectively, the contributions suggest that successful knowledge succession in the contemporary era requires an integrative approach that combines technological support, organizational design, and human engagement. By presenting concrete cases from multiple fields, this special issue aims to provide a foundation for rethinking how knowledge can be sustained and evolved in the age of artificial intelligence and societal transformation.

  • 安田 剛規
    原稿種別: 特集
    2026 年41 巻1 号 p. 12-22
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/04/01
    ジャーナル 認証あり

    日本の製造業において,労働力不足とグローバル競争が加速する中,新規事業創出とそれを支える「知の継承」は喫緊の課題である。本稿では,江戸時代の「家訓」から,現代の外部知活用やAI導入に至るまでの日本企業の知の継承モデルの変遷を,6つのフェーズに分類して分析する。かつて成功の源泉であった「家訓」や「企業文化」への過度な固執は,環境変化の激しい現代において「コンピテンシー・トラップ(成功の罠)」を招き,組織の適応を阻害している。

    これに対し,現代の先進企業は,知識の継承を属人的な文化から,「組織構造のシステム化」および「AIによる拡張」へとシフトさせている。特に,シリアスゲームやXAI(説明可能AI),そしてAIが自律的に暗黙知を構造化する「自律型ナレッジエコシステム」など,システムやAIが単なる道具ではなく「仲介者」として機能する最新事例を詳述する。

    しかし,AIによる知識の「外在化」だけでは不十分である。真の継承を実現するには,非熟練者がAIの提示する解を無批判に順守するのではなく,その理由を熟考し自らの知識として「内面化」するプロセスが不可欠である。ゆえに,AIを単なる「答えを出すマシン」としてではなく,思考を深める「壁打ち相手」や「問いかけ役」としてデザインできるかが,「意味」を含めた継承の鍵となる。結論として,知の継承媒体は「言葉」から「システム」,そして「エージェント」へと進化しており,効率性と深い内面化を両立させる共創エコシステムの構築こそが,製造業変革の道筋であることを提示する。

  • 三宅 光頼
    原稿種別: 特集
    2026 年41 巻1 号 p. 23-31
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/04/01
    ジャーナル 認証あり

    本論考は知の承継としての名家旧家の家訓とその行動特性について考察するものである。家訓を取り上げる理由は,歴史の中で生き残った多く名家旧家の哲学を効率的に解析し,その成功哲学を経営学的な視点で修得しようとするものである。いわゆるベンチマーク,ベストプラクティス,ロールモデルの至宝が名家旧家の家訓の中にちりばめられているはずである。無論,時代背景も個別の経営環境も異なるので,現代の事業の成功者や資産家の行動も参照しつつ,知の承継を理解する便とする。論考の内容は,第一に名家旧家の出自と形式的な区分による定義と家訓の機能の整理,第二に日本の経済経営,特に地域経済・文化の繁栄に尽力した多くの名家旧家の家訓行動と事業創成のプロセスの理解,第三にいわゆる世界のビリオネア(億万長者)といわれる著名な資産家の事業創成行動,第四に華僑の資産移動にみられる時代が生んだ共生行動について解説する。家訓がもたらす統制と規範化行動のプロセス,家訓にまつわる陥穽とその克服の検証が,次世代人材への新たな知の承継として結実し,次代の泰山北斗のイノベーティブな指標となり,新たな示唆となることを期待するものである。

  • 山本 孝志
    原稿種別: 特集
    2026 年41 巻1 号 p. 32-38
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/04/01
    ジャーナル 認証あり

    日本の中小企業は,企業数の99.7%,雇用の約7割を占めており,日本経済の屋台骨を支えている。しかし大企業に比べ,システム化や文書化が遅れており,知識が経営者や一部の熟練従業員に集中している。さらに,知識を広めるための専門部署や研修制度も十分でないため,知の継承が現場体験に偏る課題を抱え,労働生産性が低い。

    本稿では,知の継承とデジタルトランスフォーメーション(DX)を企業の存続と成長に不可欠と捉え,タイル製造業を営んでいる中小企業の取り組みを紹介する。具体的には,①伝統的な窯業技術を新規事業の中で継続的に活用して発展へつなげる活動,②工場内の職人が持っている技能をデジタル化する試み,③勘や経験頼みのアナログ的な組織文化から脱却して,デジタル化に対応した新しい組織文化を醸成する活動,の3点を取り上げる。

    不確実な経営環境において,中小企業にとっての知の継承とDXは,単なるノウハウの保存ではなく,労働生産性を高め,企業が生き残るための価値創造を促す戦略である。事例を通じて,具体的な知の継承とDXの実現方法と課題について述べる。

  • 出川 敬司
    原稿種別: 特集
    2026 年41 巻1 号 p. 39-43
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/04/01
    ジャーナル 認証あり

    本稿は,M&AをKnowledge Transferすなわち「知の継承プロジェクト」と再定義し,その意義と課題を考察した。事業承継型と技術獲得型の実態を分析し,成功・失敗の要因を明らかにするとともに,筆者自身のバンダイ×ナムコPMI経験を通じ,文化摩擦を乗り越える人的融合の重要性を強調した。

    また,星野リゾートによる老舗旅館承継,町工場の失敗事例,金型メーカーの成功事例を検討し,知の継承がいかに成果や失敗を左右するかを明らかにした。

    さらに,M&A専門家がクロージングまでしか関与せず,真の統合作業を担える人材が不足しているという課題を提示し,PMI人材育成の必要性を提言する。

  • 濱田 昌彦
    原稿種別: 特集
    2026 年41 巻1 号 p. 44-50
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/04/01
    ジャーナル 認証あり

    福島第一原子力発電所の事故以降の原子力発電業界は,厳しい事業環境となり,企業経営の舵取りは,極めて難しい局面を迎えている。そのような事業環境を生き抜くため,当社は,経営戦略と技術戦略を刷新して,技術と組織能力の発展的な育成の仕組み(知の継承の方略)を企業活動に実装し,新市場・新領域への研究サービスの反復的な提供により,技術経営及び両利き経営の企業として持続可能性を高めてきた。その事例を分析し,当社のような高規制,高専門性産業の知の継承は,コア技術の保存ではなく,市場との相互作用を通じたコア技術の動態的プロセスとして実現され得ることなどを理論的命題として示した。

  • 三ツ木 直樹
    原稿種別: 特集
    2026 年41 巻1 号 p. 51-58
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/04/01
    ジャーナル 認証あり

    高齢者デイサービスにおける支援実践には,多くの暗黙知が存在するが,それらは属人的で継承されにくい。本稿では,スタッフの経験知を短い振り返りで発現させ,AIが整理し,組織知として循環・定着させる仕組みを導入した事例を示す。個人知が組織に共有され自発的改善が生まれた過程を示し,介護DXにおける知の継承モデルの意義について論じる。

  • 濱口 正樹
    原稿種別: 特集
    2026 年41 巻1 号 p. 59-65
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/04/01
    ジャーナル 認証あり

    本稿は,ファミリービジネスにおける「伝統」は革新の足かせなのか,それとも武器となり得るのかという問いに対し,伝統と革新の統合プロセスを検討する。伝統を,世代を超えて継承される知識資産として捉え,その扱い方次第で革新を促進も抑制もする二面性を整理したうえで,伝統を動態的資源として活用する二つのマネジメント手法――①伝統の戦略的マネジメント(制御と選択的継承),②伝統の再解釈(意味の再構築)――を提示する。ヤマト運輸・小倉昌夫の事例分析を通じ,制度的慣行の相対化,組織内部知識の選別的継承,創業理念の現代的再翻訳が相互に作用することで,宅急便という革新的事業が創発したことを示す。以上より,本稿は,伝統と革新を対立概念として捉える従来観を超え,ファミリービジネスにおいて伝統が未来志向の価値創造に転換され得る条件を明らかにする。

  • 細野 一雄
    原稿種別: 特集
    2026 年41 巻1 号 p. 66-73
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/04/01
    ジャーナル 認証あり

    知識は,企業における技術力の維持・向上やイノベーションに繋がる重要な経営リソースである。その中で,実践から得られる経験知は貴重である。プロジェクト型組織でビジネスを行なっているIT(情報技術)業界では,短いサイクルで技術が変化してきたことから,SE(システムエンジニアリング)職の有益な経験知の大半は,ベテラン個人に内在したままとなっている。組織的には暗黙知となっていることから,ベテランの退職と共に組織から消失するリスクがある。したがって,有益な経験知を選別して次世代層に移転し,組織として継承することは重要な経営課題である。DX(デジタル変革)やAI(第三次人工知能ブーム)にも有益な経験知とは何かを識別し,少子高齢化社会に相応しい継承方法をあらためて明らかにする必要がある。その起点は,知識を伝える側ではなく,受け取る側の観点で取り組むべきと考える。筆者はこのテーマに関する研究者として,両者の意見の対比を試みた。その結果からは,短いサイクルで技術が変化している職種においては,ベテラン層と協業しながら次世代層がオンデマンドで経験知を受け取る「知の協創」によって継承する方法も選択肢であることを研究書にまとめた。本稿はその概要をご紹介するとともに,表出化が難しい経験知(暗黙知)をコード化する方策を考察する。

  • 笹嶋 宗彦, 林 宏樹
    原稿種別: 特集
    2026 年41 巻1 号 p. 74-83
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/04/01
    ジャーナル 認証あり

    近年,教育方針として,問題発見・解決能力の育成を重視することが国際的な流れとなっており,日本の高等学校教育でも,文部科学省が掲げる方針の下,問題解決プロセスを用いた探究学習を行うことで問題解決力を育む教育活動が盛んとなってきた。

    しかしながら,我が国の高等学校においては,探究学習を指導する環境が十分には整っていないと筆者らは捉えている。特に,我が国における高等学校の探究学習においては,“探究指導に必要な知識”を,教員に伝えることが必要とされている。そのためには,探究学習の方法,言い換えると,研究の仕方を定式化して,各段階を言語化し,研究の方法を定式化して,テンプレートとも言うべきものを作成する必要がある。

    知識には形が無く,形式化することは一見困難に見えるが,筆者らは,オントロジー工学の技術を用いることで,この課題に取り組んでいる。はじめに,高校の教育現場において,探究学習指導のための知識を現場の教員に伝承しなければならない現状について観察と分析を行った。それに基づいて探究学習を支援するために必要な知識の内容,すなわち,探究学習の手順をモデル化するための方法を検討し,さらに,その知識自体の評価を行った。また,オントロジーそのものは可読性が低いため,探究学習についての知識の伝承を支援するためのシステムについても設計を行っており,本稿ではその概要を示す。

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