研究 技術 計画
Online ISSN : 2432-7123
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巻頭言
  • 上山 隆大
    原稿種別: 巻頭言
    2024 年 38 巻 4 号 p. 370-373
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/03/07
    ジャーナル フリー

    The Council for Science, Technology, and Innovation (CSTI) requires high-quality evidence to effectively function as the government's central coordinating body. To aid in its strategic planning and allocation of resources, CSTI has formed a specialized team and developed the e-CSTI system. This system includes a comprehensive database designed to analyze the distribution of the national budget, university operating costs, competitive funding, and the correlation between researcher productivity and outputs like academic papers and patents. Additionally, e-CSTI facilitates the identification of priority areas through detailed analysis of research outcomes, funding allocation, and expert assessments. The 6th Science, Technology, and Innovation Basic Plan has introduced a proposal for creating a Think Tank dedicated to Safety and Security, and preparations for its establishment are currently underway. I would like to extend my sincere thanks to everyone involved for their significant contributions to the development of e-CSTI.

特集 科学技術・イノベーション政策におけるEBPM
  • 赤池 伸一
    原稿種別: 特集
    2024 年 38 巻 4 号 p. 374-377
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/03/07
    ジャーナル フリー

    The special issue focuses on evidence based policy making (EBPM) in Science, technology and innovation policy. The EBPM has difficulties because it takes long times from policy implementations to appearance of their effects., and the paths are affected by various factors. This special issue consists of overviews of current state, case studies and outlooks for the future on EBPM in science, technology and innovation policy by policy makers and researchers.

  • 赤池 伸一
    原稿種別: 特集
    2024 年 38 巻 4 号 p. 378-392
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/03/07
    ジャーナル フリー

    科学技術・イノベーション政策は,広範な政策領域をカバーし,階層構造を有する複雑な行政組織やステイクホルダーが関与している。そのEBPM(Evidence based policy making)には,政策の効果が現れるまでに長い時間がかかること,また,その過程が複雑で様々な要因が関わること等から,困難な面がある。行政実務的には,科学技術・イノベーション基本計画のフォローアップに見られるように,ロジックチャートと記述的な調査分析を組み合わせて,施策の執行状況を可視化や検証していくことが現状である。

    EBPMには,産学官の多様な形態の政策調査研究機関・プログラムが支えている。本論文では,基礎資料,枠組みと意思決定プロセス,研究力の測定指標,研究環境,研究費とファンディング,科学技術・イノベーション人材と国際頭脳循環,オープンサイエンス(研究成果の公開・共有),民間研究開発とイノベーション,産学官連携,ベンチャー及び地域の科学技術・イノベーション,重点分野・エマージングな研究領域の分析,並びに,ELSI,STS及び科学コミュニケーションの各政策課題に応じて,EBPMの現況をまとめる。

    最後に,今後の課題として,政策担当者と政策研究者の関係性,人材育成及び理論・モデルの観点から論じる。

  • 七丈 直弘
    原稿種別: 特集
    2024 年 38 巻 4 号 p. 393-405
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/03/07
    ジャーナル フリー

    科学技術・イノベーション政策(STI政策)では,近年重点分野分析への関心が高まってきている。その背景には,グローバルな科学研究の競争激化による,萌芽領域や融合領域への関心,社会課題解決への関心,経済安全保障など国際的な秩序の変化による関心などがある。重点分野政策は新しい課題ではなく,科学技術政策の萌芽期から始まり,現在まで継続している活動である。しかし,科学研究の把握に必要なデータの入手可能性の増大,データ処理能力の増大を背景として,以前よりもより詳細な分析が可能となり,また科学分野の細分化と研究速度の増大により,より幅広い範囲をより深く分析する必要が生じたことから,重点分野が示す領域の単位は時代を経てより細かくなってきている。このような分析ニーズに対応するため,計量書誌学を用いた分野把握の手法が開発され,STI政策立案の現場で使用されるようになってきた。分野把握には,論文間の近接性の評価と,その総体としての近接性が高い論文のクラスタリングが必要である。このようにして得られた分野に対して,分野の成長性,経済安全保障上の重要性(物質,サプライチェーン等)による評価が行われる。重点分野分析そのものが萌芽的分野であり,その発展はSTI政策立案の高度化に多いに寄与すると期待される。

  • 面 和成
    原稿種別: 特集
    2024 年 38 巻 4 号 p. 406-419
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/03/07
    ジャーナル フリー

    サイバーセキュリティの分野は,ネットワーク,ソフトウェア,ハードウェアから,暗号,認証,サイバー攻撃対策まで広範にわたる。一方,サイバーセキュリティの専門家といえども,サイバーセキュリティの全ての分野に精通している者はほとんどいない。そのため,サイバーセキュリティ分野の動向を偏り無く把握するには,論文数や特許ファミリー数など,エビデンスに基づいた分析が非常に重要である。しかしながら,これまでサイバーセキュリティ分析において研究論文と特許文献の両面から分析を実施したものはほとんどない。本稿では,専門分野としてサイバーセキュリティを取り上げ,日本の内閣府で構築している研究分野分析ツールe-CSTI,及びElsevier社の書誌情報を用いて,サイバーセキュリティ分野の動向の詳細な分析を行う。具体的には,サイバーセキュリティ分野の代表的な2つのクラスター(暗号とサイバー攻撃対策)を抽出し,それぞれの論文クラスター及び特許クラスターの構造を明らかにし,クラスターレベルで世界各国の研究動向,及び注目テーマの動向について分析する。

  • 林 隆之
    原稿種別: 特集
    2024 年 38 巻 4 号 p. 420-432
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/03/07
    ジャーナル フリー

    国際卓越研究大学や地域中核・特色ある研究大学強化促進事業などの近年の大学改革政策は,大学の変革へ向けた戦略策定を条件に,多額の資金を一部の大学へ配分し,それにより国全体の研究力の発展を図ることを目指している。一方で,大学改革政策は,各大学が計画を達成したかのプロジェクト評価はなされるものの,大学改革事業がいかに国レベルで効果を上げているかを,エビデンスに基づきプログラム評価することは十分に行われてこなかった。本稿では,地域研究大学の強化を促進する事業を事例に,評価やモニタリングの枠組みを検討する。少数の大学に資金を配分することが国の研究・イノベーションシステムの構造変化をもたらし,国全体への効果が得られるロジックを明確化する必要性を指摘したうえで,ネットワーク・オブ・エクセレンスを核とする研究重視大学,グローカルなイノベーション・エコシステムにおける起業家的大学,地域変革型イノベーションにおける変革型大学の類型ごとの評価の課題を検討する。

  • 佐藤 靖, 松尾 敬子, 菊地 乃依瑠
    原稿種別: 特集
    2024 年 38 巻 4 号 p. 433-444
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/03/07
    ジャーナル フリー

    わが国では近年,政府全体としてEBPMが強力に推進され,各府省において関連の取り組みが広がってきた。しかしながら,各府省では従前からの取り組みも含めエビデンスはきわめて多様な形で政策に用いられており,その様態は政策分野や課題によって異なっている。これまで,いくつかのEBPMの分野横断的研究がなされてきたが,そうした研究では分野間比較を行うフレームワークが設定されておらず,EBPMに関わる課題の全体像は明らかになっていない。筆者らは,科学-政策インターフェース(SPI)という概念的フレームワークを用いて,実践的な観点からわが国のEBPMの現状と課題に関する分野横断的研究を行った。12の政策分野を対象としたこの研究では,EBPMの実践に関する6つの一般的な課題群を特定し,それらに対する各分野の対応状況を整理した。その内容をベースに,本稿ではSTI分野のEBPMの現状と課題について,他分野と比較したときどのような特徴をもつといえるのかを論じる。全体として,STI分野ではさまざまな性格や精度のエビデンスが,必ずしも直接的に政策の根拠となるのではなく,限定的ではあるが多面的な政策上の有用性をもって機能しているといえる。

  • 吉澤 剛, 田原 敬一郎, 安藤 二香
    原稿種別: 特集
    2024 年 38 巻 4 号 p. 445-459
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/03/07
    ジャーナル フリー

    政策と科学とが「共進化」する取り組みとして,科学技術イノベーション政策(STI政策)に限らず海外事例において目立つのは,政府の政策課題や組織学習に応えうるARI(研究関心領域,Areas of Research Interest)やラーニングアジェンダの作成である。本稿では議題設定や政策形成に資するためにどのような政策や研究の問いを設定すればよいかについて英米の事例を紹介し,政策研究大学院大学科学技術イノベーション政策研究センター(SciREXセンター)と文部科学省における試行的実践を取り上げて,日本における新たなEBPMの可能性について展望する。SciREXセンターの「STI政策における研究と政策形成の共進化の体制・方法の在り方の検討」(方法論プロジェクト)では,「共進化実現プログラム」第3フェーズ(2023~2025年度)におけるプログラム設計の参考とするため,2022年度にARIを試行的に実践した。また筆者らは,この経験と知見を基に,研究現場を所管する文部科学省として中長期的に考えるべき政策上の問いを検討するためのワークショップを,文部科学省と協力して企画・開催した。両実践は,現行の組織的・制度的な枠内で取り扱うのに《ちょうど良い》政策課題や研究課題を見出すことを第一義的な目的としつつも,それらの枠組みを超えたより本質的な課題にアプローチし,既存のEBPMの限界を越えるための処方箋ともなりうる可能性が示唆された。

研究論文
  • 藤田 正典, 菅井 内音, 隅藏 康一, 牧 兼充
    原稿種別: 研究論文
    2024 年 38 巻 4 号 p. 460-475
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/03/07
    ジャーナル フリー

    本稿では,研究分野と所属機関の多様性の観点から,卓越した研究業績を持つ研究者の特徴を定量的に分析する手法を提案するとともに,卓越した研究業績を持つ研究者の研究分野多様性や所属機関多様性が高いことについて検証する。学術文献データベースから,2008年から2016年までに刊行された19,536,453件の文献で分野ごとに引用数が上位1%の高被引用論文を持つ主要高被引用研究者(MCR)を抽出し,MCRの中で特に高被引用論文が著しく多い卓越した研究業績を持つ研究者をスター・サイエンティスト(SS)とした上で,本稿で提案する研究分野および所属機関の多様性指標を用いて,研究分野ごとにSSの特徴を分析した。その結果,SSはSSでないMCRと比較し,分野多様性が約2.5倍以上高いこと,所属機関多様性が約4倍高いこと,分野多様性および所属機関多様性が時間の推移とともにより高くなることが示された。さらに,材料科学や化学などの分野では他の分野と比較しSSの分野多様性が高いこと,日本のSSの構成比率は日本以外の国の構成比率より低く,特に人文社会学系分野などで著しく低いことが分かった。科学技術イノベーション政策を策定するにあたり,本稿で提案した手法は,研究者の研究分野多様性や所属機関多様性を分析する手法の一つとして有効であるといえる。

  • 宮崎 正也
    原稿種別: 研究論文
    2024 年 38 巻 4 号 p. 476-493
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/03/07
    ジャーナル フリー

    スマホの普及速度を年齢別に比較したところ,60代の普及速度は20代より約3倍遅かった。この差を生起させている原因を探るため,本論文ではABMシミュレーションを使ってスマホの普及曲線を再現した。再現されたシミュレーション結果から,交友人数の少なさが普及速度を遅くする主要な要因だと確認できた。従来の先行研究は普及速度に影響を与える様々な要因を指摘して,見解が多様に分かれていた。それに対し,本論文では各種条件をそろえて分析し,交友人数が普及速度に与える影響を定量的に図示した。さらに本論文は,若者と高齢者とでは,イノベーションの採用決定時に依拠する主要な意思決定方法が異なる可能性を結果から推論している。

  • 島岡 未来子, 鬼頭 朋見, 佐山 弘樹, フーヘ ジン, チョウーユ ツァイ
    原稿種別: 研究論文
    2024 年 38 巻 4 号 p. 494-506
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/03/07
    ジャーナル フリー

    高等教育におけるアントレプレナーシップ教育プログラムは,その潜在的な影響力に対する認識の高まりを反映し,ここ数十年で大きく成長した。これらのプログラムは,創造性と革新性を育む起業家的マインドセットとスキルを育成することを目的としており,学生の専門的な成長と社会への将来的な影響力にとって極めて重要である。このような資質を育成することの複雑さを考慮すると,高等教育機関は,起業家教育の目標と密接に連携した効果的なFD(Faculty Development)プログラムを提供する必要性がある。本研究では,これらの目的を達成するためのFDプログラムの有効性を評価するための,エビデンスに基づく枠組みを紹介する。本研究では,41人の参加者を対象に,プログラム期間中に3回の評価を行った。その結果,創造性のプロセスに関連する2つの学習成果に有意な改善が見られ,これらの成果の発展には3つの重要な個人差が顕著に影響していた。さらに,選択コースは,学習成果の1つを向上させることがわかった。

不定期連載 古典から読み解くイノベーション研究の潮流と展開
編集後記
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