研究 技術 計画
Online ISSN : 2432-7123
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巻頭言
  • 城山 英明
    原稿種別: 巻頭言
    2025 年40 巻3-4 号 p. 260-263
    発行日: 2025/12/26
    公開日: 2025/12/26
    ジャーナル フリー

    In contemporary science and technology policy, fostering strong linkages between scientific research, technological development, and societal systems has become essential to driving meaningful social transformation. This essay proposes a typology of such linkages and examines the types of human resources required to enable them—resources that differ from conventional scientists and governmental personnel. These individuals must combine deep scientific expertise with multidisciplinary analytical capability at the meta-level and advanced skills for political coordination among stakeholders. Furthermore, to cultivate future talent of this kind, these competencies must be systematically but incrementally articulated and translated from tacit to explicit knowledge.

特集 科学技術・イノベーション政策科学の学際的アプローチ:より良いアジェンダ・セッティングのために
  • 吉岡(小林) 徹
    原稿種別: 特集
    2025 年40 巻3-4 号 p. 264-266
    発行日: 2025/12/26
    公開日: 2025/12/26
    ジャーナル 認証あり

    Designing a science, technology, and innovation (STI) policy often faces challenges in developing a vision and identifying policy issues due to its highly ambiguous and indeterminate nature. Accordingly, efforts have emerged across various academic fields to utilize scientific knowledge in order to promote more scientifically grounded STI policy design. This special issue surveys approaches to "better policy formation" from multiple academic perspectives and explores the possibilities for future developments in policy science.

  • 吉澤 剛
    原稿種別: 特集
    2025 年40 巻3-4 号 p. 267-284
    発行日: 2025/12/26
    公開日: 2025/12/26
    ジャーナル 認証あり

    フォーサイトやテクノロジーアセスメント(TA)を包含する戦略的知性という用語が科学技術イノベーション政策の分野に導入されてから四半世紀が過ぎたが,《戦略的》という形容詞に反して政策形成において十分に活用されてこなかった。本稿ではこの理由について,実務者と政策立案者の視点のずれと,政策科学における政策過程論と政策分析の関心事の乖離に起因していると捉え,両者の思想的支柱に代わる第三の哲学的パラダイムとして批判的実在論を提起する。批判的実在論は存在論的実在論,認識論的相対主義,判断合理性を基盤とし,未来志向の戦略的知性において正確な予測や個人の解釈を越えた社会的現実への道を開く。そしてアクター個人の批判的探求と再帰性,オープンな想像力によって社会変革を促す解放的な未来を描出できる。今後における戦略的知性の利用を促進するため,学際性と方法論的多元性,存在論的な問題定義と関与,未来思考とエージェンシーという3つの批判的実在論の観点から理論的示唆と実務的提言を導く。結論としては,エージェンシーと構造,政策分析と政策過程の階層性や相互作用を意識し,行政組織において内部のキャパシティ・ビルディングと外部との緩やかなネットワークを形成することが,戦略的知性が政策に活用される現実的な道筋となる。

  • 田原 敬一郎, 吉岡(小林) 徹, 山野 宏太郎, 高橋 真木子
    原稿種別: 特集
    2025 年40 巻3-4 号 p. 285-304
    発行日: 2025/12/26
    公開日: 2025/12/26
    ジャーナル 認証あり

    科学技術・イノベーション政策は社会目標の重視とともに複雑化し,誰のどのような活動をどう評価するべきかがわかりにくくなっている。そこで本稿は,科学技術・イノベーション政策に関する3つのフレーム(1.リニアモデル,2.ナショナル・イノベーション・システム,3.トランスフォーマティブ・チェンジ)と,システム理論の2つのパラダイム(サイバネティクス,オートポイエーシス)の観点から体系的に科学技術政策を分析する。各フレームとパラダイムが想定するシステムの構成,境界,政策介入の仕組みを整理したうえで,具体例として6期にわたる日本の科学技術基本計画の変遷を検討する。その結果,第1~3期はフレーム1を基調としつつ,徐々に社会や産業との連動を意識するフレーム2的要素が強まった。第4期は震災を契機に対象システムが大きく拡張され,フレーム3の萌芽が見られるが,依然としてPDCAに基づくサイバネティックな管理手法が前提であった。第5期ではSociety 5.0 を掲げ,学習志向の評価や自律的システム間連携などオートポイエーシス的要素が明確化し,フレーム3への本格移行が始まった。第6期では社会変革志向が強まる一方,政策評価が政治システムの主導性を前提としたものに偏り,フレーム3との不整合が生じている。ここからはフレームとシステム観の違いに応じて適切な政策評価手法を選択する必要があることが読み取れる。

  • 吉田 公亮, 吉田 晃宗, 牧 兼充
    原稿種別: 特集
    2025 年40 巻3-4 号 p. 305-324
    発行日: 2025/12/26
    公開日: 2025/12/26
    ジャーナル 認証あり

    ユニコーン企業創出はスタートアップの成功事例として,イノベーション政策の政策目標にされるようになった。一方で,日米中の3カ国のユニコーン企業の評価額に対する調達額の割合を比較すると,平均して米国22%,中国26%であるのに対し,日本は8%である。そこで,本稿では,日本の高評価額のスタートアップの詳細を分析した。具体的には,各シリーズにおいて,投資家に占める各種投資家属性の内訳が,評価額の見積りにどのような影響を与えているかを評価した。事業会社と金融機関が多く含まれるほど,調達額に対する評価額の膨張を抑制する資金調達となっている。一方,投資経験の乏しい金融機関が多くなるほど,調達額に対して評価額が膨らむ。一方で,経営資源の豊富な海外ベンチャー・キャピタル(VC)は,評価額の膨張を抑制する出資をしている。これらの結果に基づくと,スタートアップ評価額は過大に評価されている恐れがある。スタートアップの企業価値の過大評価は,VCとスタートアップとの間の資本配分だけではなく,より広い範囲に影響を与えうる。ユニコーン企業のような,未上場で大きく成長するスタートアップの存在が重要であることは言うまでもない。しかし,評価額のみを基準として政策目標とすることは,危険である。

  • 大森 峻一, 牧 兼充
    原稿種別: 特集
    2025 年40 巻3-4 号 p. 325-340
    発行日: 2025/12/26
    公開日: 2025/12/26
    ジャーナル 認証あり

    イノベーション創出のためには,人材・資金・サポート・インフラ・コミュニティといったエコシステムを形成することが必要である。学術的には,多くの研究がイノベーション効率を定量的に議論している。中でも,Data Envelopment Analysis(DEA)を用いた研究は,多入力・多出力を統一的に扱える点や,各DMU(Decision Making Unit)毎の強みを活かした評価を行える点から,イノベーション効率の定量化に適しているが,エコシステムの重要性に着目し,スタートアップの異なるステージの効率性を統一的に扱う研究は極めて限定的である。本研究では,スタートアップ創出・成長を知識生産・知識事業化・事業成長の3つのプロセスに分けて,Network DEAを用いて「知識生産効率」「知識事業化効率」「事業成長効率」「全体効率」として評価を行った。その結果,日本は「知識生産効率」,「知識事業化効率」は極めて高く,「事業成長効率」は最上位国に比較すると若干低い結果となった。この結果は,今後の日本のスタートアップ政策において,何にフォーカスすべきかに関する知見を提供する。

  • 高山 正行, 清水 昌平
    原稿種別: 特集
    2025 年40 巻3-4 号 p. 341-355
    発行日: 2025/12/26
    公開日: 2025/12/26
    ジャーナル 認証あり

    本稿では,エビデンスに基づく政策立案(EBPM)の強化が求められる中で,従来の因果の有無や効果の大きさを議論する統計的因果推論に加えて,因果構造そのものを探索する統計的因果探索が政策評価において果たし得る役割について論じる。特に科学技術・イノベーション(STI)政策分野における応用可能性を見据え,主要な因果探索手法(PC,GES,LiNGAM等)の技術的特徴や,未観測共通要因を考慮した拡張手法について解説し,比較を行う。加えて,STI政策分野での応用事例として,博士課程進学者数に対する政策的変数の因果的影響を探索した研究事例を解説し,研究大学において経済的支援が進学行動に及ぼす正の効果や,DC1採択の決定要因が大学の性質によって異なる可能性など,政策的含意について考察する。最後に,今後の展望として,適切なデータ設計,領域知識との整合,AI駆動型分析支援の活用,行政官との対話的協働の必要性を指摘する。

  • 黒河 昭雄
    原稿種別: 特集
    2025 年40 巻3-4 号 p. 356-395
    発行日: 2025/12/26
    公開日: 2025/12/26
    ジャーナル 認証あり

    本稿は,科学的知見を公共政策に反映させるプロセスにおいて,科学者が直面する構造的な課題と,それを克服するための制度的条件を明らかにする。自らの研究成果をもとに政策革新を能動的に主導する科学者を「学術的政策起業家(Science–Policy Entrepreneur: SPE)」と定義する。SPEは,科学と政策という異なる規範が交錯する領域で活動するなかで,「目的の唱道」と「手段の斡旋」を統合する高度な戦略を駆使することで政策実装を目指す存在である。一方で,SPEのこうした活動は公式に評価されない取り組みであることから,しばしば個人の自己犠牲を前提とした「シャドーワーク」に陥りやすい。本稿では,JST-RISTEXの既終了プロジェクト48件を対象とした比較事例研究を通じて,政策実現の成否を分ける要因を解明するとともに,SPEがどのようにして障害を克服しているのか,その戦略を明らかにする。同時に,SPEを支えるはずの「準・境界組織(QBO)」が,研究者に機会を提供するという順機能を果たしながらも,意図せざる結果として政策実装に伴うリスクを個人に転嫁する逆機能をも内包しており,結果として「非互恵的(non-reciprocal)」モデルに陥っていることを論証する。こうした制度的隘路を克服し,個人の活力を組織的に支え報いる「互恵的(reciprocal)」なエコシステムを構築するべく,時限的なQBOの機能強化の方策を提案する。

  • 吉岡(小林) 徹, 小澤 雄太郎, 杉崎 弘
    原稿種別: 特集
    2025 年40 巻3-4 号 p. 396-412
    発行日: 2025/12/26
    公開日: 2025/12/26
    ジャーナル 認証あり

    技術起点の社会変革を目指したイノベーション政策では,技術と社会の関係性についての具体的なビジョンの作り込みが求められる。しかし,その複雑性と高度性から政府が担うことは容易ではない。これまでの研究では,主として産業セクターや学術セクターの,技術の変化に対して直接の利害を持つアクターによるネットワーク,または,政府の支援を受けた非営利組織などの中間組織がビジョンの具体化を担いうることが示唆されている。しかし,それを実証した事例の蓄積は限られている。本稿では,製造業をめぐる技術と社会の関係性の変革の具体像を示したIndustrie 4.0の概念に注目し,ドイツにおける同概念の提示と,イノベーション政策への取り込みの過程を,ドイツ連邦政府や関連する中間組織が公表した政策文書に基づき整理し,技術と社会の関係性のビジョンの作り込みの担い手を明らかにした。その結果,第一に,政策立案を行う民間フォーラムの創設や,既存のアカデミー組織への公的助成を通じて,政府が主導して政策立案のネットワークの強化を図っていたこと,第二に,それらの政策立案のネットワークがIndustrie 4.0概念の導出と具体化,さらにはその実装のためのロードマップの作成を担い,政府はそれらを自身の戦略に取り入れていったことがわかった。政府と民間の役割分担が,技術と社会の複雑な関係性を伴う政策形成において観察された。

研究論文
  • 町永 信雄
    原稿種別: 研究論文
    2025 年40 巻3-4 号 p. 413-427
    発行日: 2025/12/26
    公開日: 2025/12/26
    ジャーナル フリー

    医薬品開発は人々の健康と社会活動を支える基盤であるが,高度化とコスト増大により単独遂行は容易ではない。このため,世界的に産学官連携によるオープンイノベーションが進む。日本でも制度的支援が進められているが,現場では依然として課題が残る。本研究は,医薬品産業における産学官連携を仲介・支援する実務担当者の視点から,技術移転プロセスに内在する課題とその構造的関係性を明らかにすることを目的とした。製薬企業,アカデミア,研究支援法人に所属する10名への半構造化インタビューを実施し,修正グラウンデッド・セオリー・アプローチにより質的分析を行った。その結果,①アカデミア創薬を阻む制度と資源の現実,②技術と価値を橋渡しする人材の不足,③研究シーズと企業ニーズのマッチング活動の形骸化という3つの主要課題が抽出された。構造モデルから,これらの課題は相互に連関し,研究シーズの魅力低下,企業ニーズとのミスマッチ,および担当者のモチベーション低下を通じて,技術移転の停滞や持続可能性の損失といったリスクを形成している可能性が示唆された。さらに,アカデミアが本来担うべき科学的深化に十分取り組むことが困難となっている構造的ジレンマが浮き彫りとなり,このジレンマが技術移転のボトルネックとなっている可能性も示唆された。今後,仲介人材の育成,柔軟な研究運営と資金制度の整備,マッチング支援の質的向上など,多面的な実務支援が求められる。

研究ノート
  • 桑原 賢司, 古川 柳蔵
    原稿種別: 研究ノート
    2025 年40 巻3-4 号 p. 428-440
    発行日: 2025/12/26
    公開日: 2025/12/26
    ジャーナル フリー

    戦前の日本では,ものづくり職人を含め多くの人々は暮らしの中でものづくりを行っていた。ものづくりを通して人は心豊かになることは指摘されているが,ものづくりをしている人が身に付けてきたどのような考えがその人の行動や心の豊かさに影響を与えるのだろうか。ものづくりの考え,人の行動と心の豊かさの間のメカニズムは不明である。本研究はものづくり分野を対象にして,ものづくりをしている人にものづくり概念構造に関するアンケートを行い,アンケートデータに基づいた統計学的手法により知識処理システムを構築し,つくり手の心の豊かさをより高めるものづくり概念構造を具体的に推論する手法の構築を目的とした。統計学的手法には構造方程式モデリング(以下SEMと呼ぶ)を用いた。13人のものづくり職人へインタビューを行い,行為分解木手法によりものづくり概念構造を40種類抽出した。選定したものづくり職人をモデルにした心の豊かさにつながるSEM(パス図)を構築し,ものづくりをしている人にアンケートを行い,アンケートデータを基にパス図を解析した。アンケート対象者に適合するパス図の構築により知識処理システムを構築し,つくり手の心の豊かさをより高めるものづくり概念構造を具体的に推論することができた。行為分解木手法と統計学的手法により知識処理システムが構築され,つくり手の心の豊かさをより高めるものづくり概念構造を具体的に推論する手法を構築した。

ビジネスレポート
  • 杉谷 浩行
    原稿種別: ビジネスレポート
    2025 年40 巻3-4 号 p. 441-454
    発行日: 2025/12/26
    公開日: 2025/12/26
    ジャーナル フリー

    3D CADは,モノづくりに最も影響を与えた産業用ソフトウェアの一つといわれており,企業の設計・開発の現場で広く使われている。我々がふだん目にする製品の形状には,3D CADが深く関与している場合が多い。3D CADが複雑な形状を作成できるかは,幾何形状の生成を担うソリッド・モデリング・カーネル(以下カーネル)と呼ばれるコア技術に強く依存している。このカーネルの開発には莫大な費用と時間,そして何よりも高度な技術力が必要なため,長い間3D CAD市場の参入障壁となっていた。しかし,2つの商用カーネルであるACISとParasolidの公開により,この障壁は取り払われ,新たな市場(ミッドレンジCAD市場)が創出された。本稿では,厳しい競争環境下における2つのカーネルの競争戦略を考察する。両者の戦略には,当時はまだ理論的に未確立だった二面市場戦略の萌芽が見られるが,期待された成果には至らなかった。この要因として3D CADが持つ産業用ソフトウェアの特性に着目した結果,ネットワーク効果にはプラスとマイナスがあり,戦略の成否に影響することが示唆された。

編集後記
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