研究 技術 計画
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巻頭言
特集 研究力を強化する研究環境改革と研究基盤マネジメント
  • 江端 新吾
    原稿種別: 特集
    2024 年 39 巻 1 号 p. 5-7
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/06/05
    ジャーナル フリー

    Promoting research capabilities requires reforming the research environment, a task fraught with numerous challenges that are not necessarily easy to overcome, thus requiring appropriate management. In particular, ensuring that researchers have constant access to the necessary research equipment is crucial for the sustained creation of results.

    In this special issue titled "Research Environment and Research Infrastructure Management to Promote Research," we will review from not only a policy perspective but also from academic and management viewpoints. Additionally, we will present research papers by experts who are actively engaged in the forefront of research infrastructure. These research papers will cover initiatives, challenges, and future developments regarding research environment reform.

  • 江端 新吾
    原稿種別: 特集
    2024 年 39 巻 1 号 p. 8-16
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/06/05
    ジャーナル フリー

    研究基盤の共用化政策は,第6期科学技術・イノベーション基本計画等において「研究環境改革」に位置付けられた。一方で,研究基盤に関するエビデンスはこれまで質・量ともに不十分であり,EBPM(Evidence-based Policy Making)に基づく政策的なフィードバックが得られる状況ではなかった。そのような状況を勘案し,内閣府が構築したe-CSTI(Evidence data platform constructed by Council for Science, Technology and Innovation)では,近年研究基盤に関するエビデンスを取得し分析を試みている。

    本論文では,研究力を強化する研究環境に関する新たなエビデンスと科学技術・イノベーション政策について紹介し,今後の研究基盤(ハード(施設・設備)とソフト(人財・システム)一体となった基盤)と研究環境改革の最前線について議論する。

  • 植草 茂樹, 江端 新吾
    原稿種別: 特集
    2024 年 39 巻 1 号 p. 17-25
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/06/05
    ジャーナル フリー

    「研究設備・機器の共用推進に向けたガイドライン」において,戦略的設備整備・運用計画(新しい設備マスタープラン)が提言された。この計画策定にあたっては,大学の経営戦略や財源別の分析,中長期の視点を入れることなどが求められている。

    従来の設備マスタープランは主に国への概算要求用の資料としての意味合いが強く,計画としての実効性に課題があった。また,研究設備整備のための予算の枠組みは研究現場のボトムアップが多く大学主導での予算管理が十分機能していないこと,大学間連携や共同利用・共同研究拠点などの研究設備の更新の枠組みがない,などの課題があった。一方,以前文部科学省の部会において,産学官で連携しつつ中長期で研究基盤の整備を行うことの検討の必要性も指摘されており,本稿において,研究基盤戦略と産学連携の関係性についても検討を行った。

    戦略的な設備計画を策定するためには,ボトムアップ型の予算の仕組みから,国や大学主導での設備整備という考え方に変えていく必要がある。そのためには各大学での研究戦略に基づく設備整備の方針やエビデンスの構築が前提となり,国と大学で共同して新たな設備整備の戦略を構築することが求められている。

  • 境 健太郎, 田中 秀典
    原稿種別: 特集
    2024 年 39 巻 1 号 p. 26-34
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/06/05
    ジャーナル フリー

    我が国の研究力強化のために,大学の経営戦略に基づく研究設備・機器の戦略的な整備・運用・共用が求められている。このような中,研究設備の利用が大学の研究力にどのように貢献しているかを定量的に分析・評価する研究基盤IR(Institutional Research)の構築が重要であるが,いまだ発展途上であり,その機能強化と方法論の確立が必要である。本論文では,宮崎大学において開発した設備共通管理システムから得られた研究設備の学内外利用実績データを用い,学外から受託した依頼分析における研究分野,分析内容,地域性に関する分析と,学内研究者が研究設備を利用することで創出される論文の数や質に関する分析を行い,地方・地域大学である本学の研究基盤IRの一事例について述べる。

  • 玉岡 悟司, 井本 祐二, 江端 新吾
    原稿種別: 特集
    2024 年 39 巻 1 号 p. 35-50
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/06/05
    ジャーナル フリー

    大学における技術職員は我が国の研究力強化をチーム一体となって推進していくための重要なキーパーソンとして大きな注目を浴びている。一方でその存在は大学組織の中でも非常に脆弱で組織化はもとより,そのキャリアパスや待遇等,整備されていない点も多々存在している。本論文では,技術職員のキャリアパスについて,これまでどのような議論がなされてきたのか,どのような経緯で技術職員の組織化が進んできたのかなど,1978(昭和53)年に国立大学協会から提示された研究技術専門官構想,専門行政職俸給表への移行問題,技術職員の組織化,訓令第33号による職階制度の導入,国立大学法人化までの技術職員及びそれを取り巻く環境の変化について詳細に記載した。今後,技術職員に関する議論を進める上で,これまでまとめられてこなかったこのような歴史的背景を前提にしながら,技術職員に関する様々な改革をさらに推進すべき点を整理していくことが必要となるであろう。

  • 佐々木 隆太, 田島 さとみ, 岡 征子
    原稿種別: 特集
    2024 年 39 巻 1 号 p. 51-62
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/06/05
    ジャーナル フリー

    研究基盤とは,研究設備,体制,システム,基礎技術,情報インフラなど,研究活動に不可欠となる多面的な要素の総称である。本稿では,我が国の共用政策の変遷と技術職員に関する議論を追いながら,北海道大学の取り組みを事例として研究基盤のインパクトを考え,現状と展望を探る。その際,技術職員に関わる議論の変遷と政策について「政策の窓(policy window)」について論じつつ,共用政策における政策起業家(Policy Entrepreneurs)の動きについても触れる。また,技術職員に求められる能力と自己実現について論じ,自己実現基礎モデルを紹介する。

  • 江端 新吾
    原稿種別: 特集
    2024 年 39 巻 1 号 p. 63-72
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/06/05
    ジャーナル フリー

    第6期科学技術・イノベーション基本計画等,重要科学技術・イノベーション政策において大学における技術職員は,我が国の研究力強化をチーム一体となって推進していくための重要なキーパーソンとして大きな注目を浴びてきている。東京工業大学では,2019年に大学経営改革推進のための次世代型の人事戦略を,同時にこれまで研究設備・機器という「モノ」にばかり着目されていた現状に,「ヒト」すなわち「人財」の視点を加える大きなきっかけとなった,新たな次世代型の研究基盤戦略を発表した。

    本論文では,東京工業大学の次世代経営戦略に基づき設立に至った,高度な技術人財を養成する革新的なシステムである「TCカレッジ」に関するシステムの詳細と現状について報告する。高度な技術人財に関する課題は,決して1大学で取り組むべきものではない産学官における最重要事項であるため,オールジャパン化の必要性とそのためのグランドデザインのあり方についても議論する。

  • 長井 圭治
    原稿種別: 特集
    2024 年 39 巻 1 号 p. 73-81
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/06/05
    ジャーナル フリー

    研究環境整備は,単にお金をかけて研究設備の更新を行うだけでなく,様々な視点から総合的な取り組みが必要となる。研究環境改革というべきかもしれない。金沢大学では,コアファシリティ構築支援プログラムに基づいて,研究環境整備の7つの戦略を策定し,11の取り組みを進めてきた。研究基盤統括本部を実効的に機能させるための工夫の中でも,本稿では研究設備を支える技術人材にスポットあて,育成プログラム,評価システム,データベース化などの制度改革とその考え方を述べる。制度改革を行うにあたっての工夫や,具体的な運営を進めたことによって現れた新しい変化や成果の例をいくつか紹介する。

  • 林 史夫, 坂本 広太, 石原 れい子, 細田 和男, 田部井 由香里
    原稿種別: 特集
    2024 年 39 巻 1 号 p. 82-91
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/06/05
    ジャーナル フリー

    2022年3月に文部科学省から「研究設備・機器の共用推進に向けたガイドライン」が発出され,研究者が最大の研究成果を生み出すためには,研究設備・機器の共用,研究設備・機器を支える技術職員等の人材の活躍,それらが重要であると述べられている。大学において「研究者」とは教員・ポスドク・大学院生を指しており,学部生は含まれていない。しかしながら,学部生に対する共用設備・共用機器を活用した教育も研究力向上に十分資するのではないかと考え,共用機器を学部生の教育に活用する「国立大学法人群馬大学における機器分析に対する専門性を高めるマイスター育成プログラム」(通称,マイスター育成プログラム)を2018年から実施した。これまでに本プログラムを修了した19名の学生が配属された研究室の指導教員(以下,研究室指導教員)には,初心者指導の負担やストレスの軽減,研究室のレベル底上げなど,そして,本プログラムにおいて学生への指導役を担った技術職員にはヒューマンスキルの向上と一部業務の負担軽減などの効果が確認できた。このように,マイスター育成プログラムは一定の成果をあげており,共用設備・共用機器をマネジメントする組織として掲げている「共用機器の様々な利活用が織りなす研究力向上・チーム共用・地方創生のエコシステム」実践のための一翼を担っている。

編集後記
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