研究 技術 計画
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国際移動と国際共同研究が研究成果に与える影響 : 日本人エリート研究者の事例分析
村上 由紀子
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2013 年 28 巻 1 号 p. 129-142

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抄録

本論文では,渡米後何年間かアメリカで研究生活を送ったあと帰国した4人(頭脳還流のケース)と,頭脳流出した4人の著作を分析することによって,研究者のアメリカへの国際移動による研究場所の変化と,国際共著という著作形態が,研究者個人の研究成果に与える影響について明らかにした。論文の被引用回数で論文のインパクトを測ると,帰国した4人について,アメリカ時代に実施し発表した研究の方が,日本で行われたものよりもインパクトが大きいという結果になった。同様に,頭脳流出した研究者の研究についても,日本時代の研究よりも渡米後の研究の方が,インパクトが大きいことがわかった。また,先行研究では,国際共著が被引用回数を高める効果が示されてきたが,国際共同研究が研究成果を高めるのか,もともと研究成果の高い研究者が国際共同研究を行う傾向があるのかを区別することができなかったため,個人の著作の中で,国際共著という形態をとったときに,他の形態の著作よりもインパクトが高まるかを検証した。その結果,頭脳還流のケースにおいて,基本的に国際共著のプラスの効果がみられた。一方,頭脳流出した日本人研究者全員について,日本との国際共同研究の効果をみると,むしろインパクトは低下することが見出された。また,日本国内で外国人を含むチームで共同研究を行うと,むしろインパクトが低下するケースも観察された。

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2013 研究イノベーション学会
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