2023 年 38 巻 1 号 p. 6-20
研究のオープン化,国際化に伴うリスクへの対応の強化の必要性が国際的にも広く認識され,利益相反に重点を置いた研究インテグリティの強化は,研究セキュリティ強化のための有効な手段であるとの認識が国際的に共有されつつある。
我が国においても,2021年4月に政府が決定した研究インテグリティの確保に係る対応方針において,利益相反に関して,研究者自身による適切な情報開示,大学等がマネジメント強化等に取り組むこととされた。
現在,対応方針に基づき,大学等において対応が進んでいるが,我が国には蓄積がないことから,海外の事例も参考にすることが適当と考えられる。
本論文では,CRDSが2022年5月に公表した報告書に基づき,関連する国内外の最新動向を俯瞰するとともに,我が国の大学等が規定や体制の整備をする上で基本的な要素について,海外大学の事例を整理するとともに,留意事項を述べている。また,CRDSが検討に参画したOECDの関連報告書(2022年6月公表)の概要をまとめている。