抄録
研究開発業務をめぐる現行の企業経営システムの曖昧さを解消する方向として、研究開発の巨視的枠組と長期的経営計画との定量的整合関係の明確化を目指すことを提案し、それを実現するために客観的手段として必要なシュミレーション用モデルを構築した。このモデルは過去の関連事例に関する知識を整理解析して法則性を見出し、それを将来の行動の決定に利用できるようにした統計的モデルであり、2つの主柱により構成される。その1つは主要経営指標とモデルのパラメーターとの関係を記述するもので、一般性のある経験的事実を基礎にして組み立てたものである。残る1つは研究管理データの解析結果に基づいて得たもので、研究テーマのライフスパンの区切り方を標準化し、各ステップでの滞留期間、所要人員数あるいは通過成功確率に関する集積データを解析して見出した法則性を利用したものである。このモデルによるシュミレーションは複数個の製品を擁する素材系企業を想定対象としているが、単品を生産販売し独立採算制を敷く事業部を想定対象とすれば、その利用可能範囲は広く製造業全般に及ぶものと期待される。