2021 年 46 巻 3 号 p. 183-192
目的:咽頭食道憩室は超音波検査において,甲状腺とは別個の物体として観察されるだけではなく,甲状腺結節のように観察されることがあり鑑別が必要な病変である.今回,多数の症例を検討し咽頭食道憩室の超音波所見の特徴と甲状腺との位置関係を明らかにする.
対象と方法: 200X年から201X年の11年間に甲状腺超音波検査を施行した当院初診の症例のうち,咽頭食道憩室と判断した症例を対象とした.大きさ,境界,甲状腺との位置関係,内部構造,血流シグナルと嚥下動作時の超音波所見を検討した.
結果と考察:初診症例152,365例のうち151例(≒0.1%)に咽頭食道憩室を認めた.大きさの平均18 mm,楕円形,位置は左側138例(91.4%),右側13例(8.6%),甲状腺側の境界は明瞭平滑で,一層の低エコー帯がみられ,背面側の境界は欠如か観察されず,内部の血流シグナルは認めなかった.甲状腺との位置関係では,埋没型(甲状腺内に大半が埋没)は78例(51.6%),中間型(甲状腺内に約半分が埋没)は62例(41.1%),非埋没型(甲状腺内には埋没せず背側から押し上げる)は11例(7.3%)であった.嚥下動作時に,憩室は甲状腺とは異なる動きを示し,甲状腺側の低エコー層は尾側の食道の粘膜層に繋がることが観察された.
結語:咽頭食道憩室は超音波検査において,甲状腺内に埋没し甲状腺結節のように描出される症例が多数を占めている.頸部・甲状腺超音波検査に携わる者はこのことを十分に知っておく必要がある.