抄録
現在日本では人間とコミュニケーションするパートナー型ロボットが多く研究、試作、生産され、人間の日常生活に浸透しつつある。私たちは、NECの開発したパートナー型ロボット「PaPeRo(Personal Partner-type Robot)」を幼稚園に持ち込み、ロボットと幼稚園児のコミュニケーションをエスノグラフィーすることにより、幼稚園に必要なロボットの振る舞いをデザインした。例えば、歌を演奏する、出席を取る、本を朗読するなどをデザインした。そして、ロボットの振る舞いの見えが、社会的規範によってどのように組織化されるのかを考察した。例えば、ロボットが幼稚園児に出席を取るという場面では、ロボットは一方的に園児の名前をを呼んでいるだけだが、子供はロボットの呼びかけに「ハイ」と答えている。人間とロボットがシステムとしてインタラクションしていなくてもこのコミュニケーションは成立している。このインタラクションなきインタラクションは、「出席を取れば答えるべき」という社会規範によって、ロボットと園児によって社会的に構成されている。また、パートナータイプロボットは人間のパートナーになるべく設計されたが、実際には人間がロボットのパートナーになることが必要あり、幼稚園ではロボットにいつも人間がついて、ロボットをその場のコンテキストの中で常に再埋め込みする必要があった。例えばロボットが不調なときに「ロボットが疲れている」と園児に説明している。今後は、ロボットをロボット単体として見るのではなく、ロボットと人間を一体として捉えてデザインする必要がある。