従来,デザイン学研究は対象に依存したデザイン方法や技術の研究が主流であり,デザイン対象に依存しない一般性を有するデザイン理論や方法論に関する研究は少ない.吉川らの一般設計学はその基盤をなすものであるが,デザイン科学の枠組み構築のためには,これにつづくさらなる研究が不可欠となる.本報では,今後のデザイン科学の枠組み構築の一助とすべく,デザイン理論の枠組みとしての多空間デザインモデルの概要を提示する.そして,同モデルのデザイン科学の枠組みにおける位置づけを示すとともに,同モデルに基づくデザイン推論の枠組みの構造を明示する.