1940年のニューヨーク万博で、日本は「造船」「手工芸」「紡績」「機械工」「航空」というテーマの5面から構成された写真壁画《日本産業》を展示した。
《日本産業》は、写真のモンタージュによる構成に加え、写真への着色や、金属、絣綿布、木綿紐、ガラス、加工ベニヤ板等を写真に組み合わせて装飾するなど、造形的処理が施されていた。こうした手法は、欧米の模倣や追従ではない日本独自の表現方法として、当時、批評家から高く評価された。
また《日本産業》に使われた写真は、土門拳など当時の新進写真家たちが撮影した「報道写真」だった。そして《日本産業》の特徴の一つである、5面を連結させて一つのテーマを構成する展示は、「組写真」の形式にならったものだった。
《日本産業》の写真の構図は、「リアル・フォト」の表現に強い影響を受けていたことがわかる。特に「ライカの権威」と言われたパウル・ヴォルフの写真からは、機械と人間とを組み合わせる際の構図や、国策的イデオロギーの表現の仕方など、多くの示唆を受けた可能性が指摘できる。