抄録
本研究では、諸文献に基づき調査を進めるとともに、中国江蘇省無錫市において、泥人研究所、無錫恵山泥人工場における現職の職人、研修中の生徒ならびに、かつて恵山泥人の制作に関わってきた職人らを対象としたインタビュー調査とアンケート調査を行った。その結果、本日の職人における知的財産制度構築のための課題として次の3点を明らかにした。1,職人たちは、知的財産権などという概念は持ち合わせていない。2,また、他の親方職人が行った仕事を盗んで真似るようなことは、職人の世界では禁忌とされていた。すなわち、デザイン盗用などということは、元来、職人たちの世界では生じなかったものである。それが、職人文化である。3,職人たちのひとりひとりの意匠権に対する意識は高くないものの、真摯にものづくりに取り組むなかで、社会規範としての意匠権保護がなされていた。総じて、今日の中国にあっては、「ものづくり」の経済的価値を追求するのではなく、文化として位置付け、その潜在的価値の徹底的な再確認・再認識が求められている。