大人と幼児の時間の認識の違いが原因で、両者のコミュニケーションに齟齬が発生する。本研究では、音のシークエンス性によって幼児の時間の認識に方向性を作ることが出来ると考え、音を利用したプロダクトを提案し、実験を行なった。実験の結果、日常生活の行動に関する幼児と保護者のコミュニケーションに、音が介在することによって、①幼児の行動の所要時間は延長されず、短縮傾向にある②楽しさが生じ、行動へ向かう気持ちが向上する、自律性が出る③幼児に「早く」と言わないことで、親子共に楽しさと心理的なゆとりが出るということがわかった。結果的に、幼児の時間の認識に寄り添ったプロダクトによるコミュニケーションが生まれることで、親子で時間を共有し、時間の認識の違いに起因するコミュニケーションの齟齬の軽減に繋がったと考える。また、本研究で提案したようなプロダクトの存在は、保護者にとって育児上の悩みが「自分の家庭だけではない」と思えることに繋がり、悩みが緩和される可能性がある。