抄録
筆者らは、地域における関係づくりに関する実験的なデザイン研究を行っている。本論考では、筆者らが直接関わった地域におけるつながりと価値醸成に関するデザインプロジェクト:「土と人のデザインプロジェクト –ここのひとと」(名古屋芸術大学)の実例を検証し、地域における新たな関係・価値創出手法としての映像制作・上映プロセスの活用可能性を論じる。本プロジェクトにおいて「映像」は、一回限りの上映会のために撮られる側面が強く、その過程において人々と関係を作っていくための仕組みであった。それは、従来の記録、公開を主な目的とした映像制作でも、ステレオタイプな地域のイメージを補強するための映像使用でもない。地域の調査、対象の取材、撮影、編集、上映までのプロセスを通じ、画一的な価値を解体し、新たな生きた価値としての地域の人々やその活動を発掘する方法としての映像利用のあり方を探る。完成した映像作品ではなく、そのプロセス自体が多様なステイクホルダー間の新たな関係を創出する有効な手法として働く側面に着目する。