本報告の目的は、サービスデザイン思考を経営学と美学が重なりあう問題領域と位置づけたうえで、企業者的な役割ないし姿勢としてサービスデザイン思考がきわめて重要な意味を持つという点について考察するところにある。
サービスデザイン思考においては、多様なステイクホルダーないしアクターが関係しあいながら価値を創造し、持続的な価値の循環を実現しようとすることがめざされている。これは、すぐれて経営学的にも重要な課題でありながら、日本の経営学領域においてさかんに議論されているとは言いがたい。その理由の一つに、サービスデザインをめぐる概念的な考察が緒に就いたばかりである点を挙げることができる。
そこで、本報告ではサービスデザイン思考を企業者的な役割ないし姿勢の一つと位置づけたうえで、多様なステイクホルダー / アクターに価値をもたらすための循環を描出・実現することに、そのポイントがあること、そしてそのためには感性的な眺望が重要な役割を有していることを、概念的に考察する。