イノベーション活動におけるメディアによる多様性のマネジメント

Whyを編み直すバウンダリーメディアの役割

抄録

現代の企業経営において、イノベーション創出は重要な課題であり、多様なステークホルダーとの共創が増える中で、共創のマネジメント手法の確立が求められている。本稿では、協働を促進する媒体であるバウンダリーオブジェクトに着目し、バウンダリーオブジェクトとして機能させるために意図的に導入する媒体をバウンダリーメディアと定義する。その上で、イノベーション活動の多様性のマネジメントにバウンダリーメディアを用いる方法を検討した。

本稿では、これまでに実施したイノベーション活動におけるバウンダリーメディアに関するインタビュー調査と、ビジョンを立体造形として創作し相互に解釈することによる共想手法の実践事例をもとに考察を行った。その結果、具体的な情報を伝える媒体だけでなく、ビジョンのような解釈の多様性を持つ媒体が、イノベーション活動に取り組むステークホルダーの固有の理由（Why）を編み直し、多様性をマネジメントしイノベーション活動を促進できる可能性があることが示唆された。