デザイン学研究
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明治神宮創建にみる流造(ながれづくり)意匠の成立過程
藤原 惠洋
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1992 年 1992 巻 89 号 p. 79-84

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抄録

大正期明治神宮(1915-1920)は日本近代を象徴する創建神社造営であったが,本研究は社殿意匠を決定した過程に注目し,その過程の考察と内容の検討を行った。その結果,意匠の創作性を唱えた伊東忠太による新様式の提唱が,神社奉祀調査会による国家神道思想を基にした復古的作業にとって変わり,最終的に三間社流造となった過程が明らかになった。ここで伊東が果たした役割は象徴的であり,独自の「建築進化論」を理論的背景とし不燃の新様式を主張したが,神社奉祀調査会によって新様式が否定された後は,木造社殿を前提に復古的手法を選ぶという立場の変化を見せた。また,この峻別過程を通し,国家神道思想を背景とした創建神社観は,(1)様式的普遍性(2)神話的中心性(3)純粋な神道性及び排仏性(4)復古性の4点に整理することができる。その結果,創作性は大きく後退し,復古的様式の中で造形性が課題となったが当代随一の和風意庭家安藤時蔵と大江新太郎が流造及び平安時代様式を基に巧みな全体的構成と細部意匠を見せて完成した。

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© 1992 日本デザイン学会
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