デザイン学研究
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イギリスの「ポスター芸術」におけるパトロネージの役割 : 英国グラフィックデザインの諸相(1)
菅 靖子
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2000 年 46 巻 6 号 p. 37-46

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抄録
本論は, 「ポスター芸術」の発展経緯を基軸として, イギリスの近代グラフィックデザインの発展にみるパトロネージの役割を明確にする。これは同国グラフィックデザインの主要な特徴である。「ポスター芸術」は19世紀末のピアーズ社による公報ポスター, 「しゃぼん玉」以来, 産業界のあらゆる分野で活用された。広告業界の発展とあいまって, 応用芸術論の成熟により, 20世紀初頭までにポスターは芸術の一形態として確実に位置づけられた。更にこれを推進したのが20世紀前半に活躍した3人のパトロン, ロンドン交通公社(後のロンドン運輸局)のフランク・ピック(1878-1941), シェル石油会社のジャック・ベディントン(1893-1959), そして国家公務員スティーヴン・タレンツ(1884-1958)である。彼等がポスター芸術を介して行った一連の広報活動が, デザイナー育成にも繋がった。ただしこうした寡頭的な状況は芸術表現の限界も生んだ。ここでは「ポスター芸術」とパトロネージとの関連性を探求し, 現代的な意味でのグラフィックデザインが生成された過程をパトロンとの関係から論じていく。
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© 2000 日本デザイン学会
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