抄録
中国のオロチョン族における伝統的な樺皮活用文化の諸相を現地調査することを通して、本稿では、オロチョン族の生活文化の特質として次の7つを析出した。(1)「一物全体活用」:白樺を無駄なく多様に活用する知恵。(2)「自然との共存・共生」:生存・生活に不可欠な白樺を不必要に伐採せず、自然資源を適度・適量に活用する生活実践。(3)「地産地消・自給自足」:当該地域で生産し、当該地域で使用する、自らがつくり、自らが使う文化。(4)「縦型世代伝承」:家庭における父母から子どもに、子どもから次世代に伝承される生活文化。(5)「相扶相助」:樺皮活用のすべての所作において相互扶助しながら生存・生活を図ってきた文化。(6)「身土不二・天人合一」:厳しい気候・風土と一体化して、自らがつくり伝えてきた文化。(7)「資源循環」:補修に補修を重ねながら、最後には樺皮活用の器物の一切を土に戻していく、生と死の不断の輪廻の文化。