デザイン学研究
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洛陽地域における唐三彩を支えた職人の生誕と実像 : 南石山村現地調査を通して
郭 全生宮崎 清植田 憲
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2009 年 55 巻 6 号 p. 103-112

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抄録

本稿は、現地調査・文献調査を通して、洛陽地域南石山村における唐三彩工芸の生成から今日までの変遷を分析するとともに、唐三彩工芸を支えた職人たちの実像を明らかにしたものである。以下が判明した。(1)南石山村の唐三彩は、19世紀末の鉄道敷設工事の際に〓山で出土した唐三彩を、高氏族が瑠璃瓦焼成技術を活かして修復したのが起源である。職人たちは、墳墓から本物の唐三彩を盗掘し、その修繕ならびに複製を手がけるようになった。(2)南石山村の唐三彩職人たちは、唐三彩焼成技術を身につけたばかりか、漢代や北魏時代の出土品をも複製・鑑定した。(3)南石山村における唐三彩職人は、「家族伝授」ならびに「合作社伝授」の形態で、師徒制に基づく技術伝承を行ってきた。(4)「文化大革命」「改革開放」「計画生育」などの時代の潮流の中で、職人に対する歴史的・社会的侮蔑も相まって、村民の都市志向が急速に高まり、今日の南石山村唐三彩工芸文化は質的低下と後継者の激減に遭遇している。

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© 2009 日本デザイン学会
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