日本補助犬科学研究
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イヌの歯の曲げ強さ
-イヌの犬歯はどれくらいの荷重で破折するのか-
古賀 奈月浅沼 利映早川 徹林 一彦
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2008 年 2 巻 1 号 p. 32-35

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抄録

介助犬は歯を使って車椅子を引っ張ったり、床に落ちたものを拾ったりするような動作を行うことが多いので、歯、顎骨、顎関節などに一過性に強い負荷が加わることが考えられる。そこで、ビーグル犬の抜去犬歯を用い、どれくらいの荷重で歯が破折するのか、実験的に曲げ強さを測定して検討した。その結果、ビーグル犬の犬歯歯冠部の曲げ強さは176.7MPa(メガパスカル)、歯頸部は152.4MPa、歯根部では174.4MPaで、平均では167.9MPa であった。これらの測定値をN(ニュートン)値およびkgf 値に換算すると、歯冠部は3468.0N(353.9kgf)、歯頸部は5212.3N(531.9kgf)、歯根部は5608.5N(572.3kgf)で、全体の平均は4762.9N(486.0kgf)であった。体重60kg のヒトが乗った車椅子を車道から歩道に引っ張りあげる際に必要な力はおよそ260N(26.5kgf)~ 500N(51kgf)であるため、車椅子を引く程度の荷重では、犬歯に破折が生ずることはないことがわかった。また、ビーグル犬よりも体格の大きなイヌでは、さらに強大な力が加わらなければ歯が破折することはないと推察された。

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© 2008 日本身体障害者補助犬学会
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