日本科学教育学会研究会研究報告
Online ISSN : 1882-4684
ISSN-L : 1882-4684
発表
振り返りの記述と教師の意図との整合性が低い児童の数学的思考の把握
―小学校第5学年小数の乗法に焦点を当てて―
中尾 真也
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2020 年 35 巻 3 号 p. 35-38

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抄録

本研究では,振り返りカードの記述と教師の意図との整合性が低い児童の数学的思考を明らかにし、指導改善への示唆を得ることを目的とする.そのために,開発した振り返りカードを用いて小学校第5学年「小数の乗法」の単元において実証的検討を行った.実証的検討では,まず児童の振り返りカードをオープンコーディングによって抽象化し,教師の意図するコードと児童の記述したコードを比較して整合性が低い児童を抽出した.そして,授業内容を手掛かりに,学習内容に連続性のある「計算方法を考える」授業に焦点を当てて学習者の数学的思考の変容についてSkemp(1976)の道具的理解と関係的理解を視点に考察を行った.

その結果, 関係的理解に触れることで自らの躓きに気付き,学びを自覚する様子や道具的理解のみを示す思考から道具的理解と関係的理解を結び付けて考えていることを示唆する思考へと変容している様子が浮かび上がった.このような児童の思考を把握することで自立的な学習者の育成に繋げたりスパイラルな学習によって道具的理解と関係的理解を結び付ける授業を展開したりすることができるという示唆を得た.

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© 2020 一般社団法人 日本科学教育学会
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