日本科学教育学会研究会研究報告
Online ISSN : 1882-4684
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表紙・目次
発表
  • ―理科に注目して―
    寺田 光宏, 塚本 隼平, 前田 光哉
    2024 年 38 巻 4 号 p. 1-6
    発行日: 2024/03/16
    公開日: 2024/03/13
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究の目的は学校教育における実験,実習や観察・ものづくりなど(以下:実験等)を含む教科における資質・能力の育成を目指し,失敗を資源として捉え意図的に失敗を捉える「戦略的失敗」とし,その教育的意義を整理することである.今まで著者らが個別に行ってきた「失敗」に関する研究である報告を「戦略的失敗」として捉え直し整理分類し,失敗の分類を試み,「肯定的」・「否定的」な捉え方と「回避」・「活用」の態度の2軸をとり①失敗を否定的に捉え回避する態度等②失敗を肯定的に捉え回避する態度③失敗を肯定的に捉え活用する態度④失敗を否定的に捉え活用する態度の分類から「戦略的失敗」についての定義・考察を試みた.

  • 安部 洋一郎
    2024 年 38 巻 4 号 p. 7-12
    発行日: 2024/03/16
    公開日: 2024/03/13
    研究報告書・技術報告書 フリー

    実験という概念は領域や文脈によって異なって説明されてきたが,科学教育の場においては実験をどのように捉えるべきであろうか.本研究では観察と対比した実験固有の特徴を明らかにすることを目的に,実験に対する先行研究での記述を調査した.その結果,実務としての実験観,機能的側面による実験観,方法的側面による実験観という大きく3つの側面から実験が語られてきたことが明らかになった.これらの実験観がどのような授業につながるのかというプラグマティックな観点から検討を行い,観察と対比した実験固有の特徴を方法的側面のうちの介入の有無に見出すことができることが明らかになった.

  • 髙橋 純平, 佐藤 雄紀, 石井 俊行
    2024 年 38 巻 4 号 p. 13-18
    発行日: 2024/03/16
    公開日: 2024/03/13
    研究報告書・技術報告書 フリー

    溶液の温度変化や溶媒の質量変化による物質の析出量を算出する問題が,公立高等学校入学者選抜において出題されており,その正答率は約3割と低い.つまり,約7割の生徒は,何かしらの知識・技能等の習得が未熟あるいは未習得であるために,問題に正答できなかったと考えられる.本研究では,物質の析出量を算出する際に,生徒が直面しているつまずきを明らかにすることを目的に調査を行った.その結果,生徒が直面していると考えられるつまずきの要因を6点明らかにした.

  • ―温められた水が上に移動する仕組みの理解を促す活動を導入して―
    栃堀 亮, 宮本 直樹
    2024 年 38 巻 4 号 p. 19-22
    発行日: 2024/03/16
    公開日: 2024/03/13
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究は,子ども自身の気付きによって,必要感をもって粒子概念を導入し,その形成を図ることを目指している。先行研究を通して,粒子概念の導入は,小学生の段階から系統的に行っていく必要性が示唆されていることを踏まえ,本研究では,粒子領域単元が多く含まれる小学4年生の理科学習に着目し,年間を通じた系統的な粒子概念形成を促す指導に取り組んでいる。本稿では,「もののあたたまり方」の単元において,2種類の木を比較する活動を通して,粒子同士の隙間に違いによって浮き沈みが生じていることに気付くことで,自ら粒子概念を導入し,温められた水が上に移動する仕組みを理解できるようになることを目指した。事後調査において,4割程度の子どもが,温められた水が上に移動する仕組みを粒子概念に触れながら説明しており,その結果を踏まえると,本活動は,水の温まり方の仕組みを理解したり,水の粒子概念形成を図ったりする上で,一定の効果があったことが示唆される。

  • 野村 祐子
    2024 年 38 巻 4 号 p. 23-26
    発行日: 2024/03/16
    公開日: 2024/03/13
    研究報告書・技術報告書 フリー

    消防機関による防火指導が火災予防思想に基づいて実施されるのに対し,学習指導要領における理科の内容は,価値中立的・客観的な科学知識として記述されている.火災に関する基礎的な理解を図るための学習課題を,理科の内容として客観的に記述すると,火災予防思想が捨象され,生活世界における意味が空洞化してしまう.理科における防火教育の意味の空洞化を防ぐため,本研究は,消防機関による防火指導の内容を科学的根拠に基づき説明できることを目標とする防火学習プログラムの構築を目的とした.消防機関が実施している防火指導の内容を把握し,理科の防火学習課題を活用することによって,消防機関による防火指導の内容を深く理解できるようになることが期待されるような,学習課題と防火指導の内容の組み合わせを模索した.植物体の分解燃焼の仕組みと,消火器からの消火薬剤の放射方法を接続する,「分解燃焼」の観察実験教材の開発を試みた.

  • ―「歴史科学の方法」に基づいた議論の実践を通して―
    吉岡 和希, 山本 容子
    2024 年 38 巻 4 号 p. 27-32
    発行日: 2024/03/16
    公開日: 2024/03/13
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究は,進化の理解の更なる向上を目指して,Smith & Siegel(2004)が示した「理解」の条件の1つである「正当化」に着目したプログラムを開発・実践し,その有効性を検討した.プログラムを開発するにあたり,進化生物学における方法論―「歴史科学の方法」に基づいた,複数の仮説に対する証拠に基づいた議論を中心とする活動を導入した.本プログラムを通して約6割の生徒において,進化や自然選択が科学者に広く認められた理論であることが認識され,進化の「正当化」が達成された.また,「正当化」を達成するには,進化や自然選択がもっともらしい説明であると結論付けると同時に,他の仮説に対して根拠を持って棄却できるようになることが重要である可能性が示唆された.

  • ―ウミホタルルシフェラーゼ遺伝子の第6エキソンの増幅
    大島 康平, 岡田 菜月, 小林 星空, 福士 祥代, 藤原 歩, 星 勝徳, 吉田 琴美, 安川 洋生
    2024 年 38 巻 4 号 p. 33-36
    発行日: 2024/03/16
    公開日: 2024/03/13
    研究報告書・技術報告書 フリー

    高校生を対象に市販の乾燥ウミホタルを用いて,生物発光,ルシフェラーゼ,ルシフェラーゼ遺伝子,PCR法について実験を交えながら体系的に解説すると高い教育効果が期待できるが,これまではウミホタルルシフェラーゼ遺伝子の全塩基配列が不明であったため実施が困難であった.近年になりその配列が解明されたため,当研究室は同遺伝子のエキソンのPCR増幅を検討した.高校生を対象とする事を念頭に,DNAは簡易な方法で調製し,試薬類は汎用品を用いた.第6エキソン(167bp)について,良好な結果を得られる実験条件を見出し,再現性がある事も確認した後に,岩手県内の高校生(14名)を対象にPCR増幅を指導したところ良好な結果が得られた.引き続き高校生を対象としたPCR体験実習を実施するための検討を重ねる予定である.

  • 志賀 優, 山本 容子
    2024 年 38 巻 4 号 p. 37-42
    発行日: 2024/03/16
    公開日: 2024/03/13
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本稿では,Conceptual Profile Theory(CP理論)に基づき,「遺伝子」の概念に関する異種混交的な概念理解モデル(CPモデル)の仮説的な構築を目指して,生物学哲学や概念変容研究に関する文献調査を中心とした理論的検討を行なった.その結果,「遺伝子」に関する4つの意味のゾーンを特定した.第一に,形質と直接的に1−1対応する記号として「遺伝子」を捉える「形式論的道具主義」,第二に,形質の形成において本質的な役割を果たす染色体上の実体として「遺伝子」を捉える「実在論的本質主義」,第三に,単一の産物をコードしているDNA断片として「遺伝子」を捉える「還元論的情報主義」,そして第四に,多様な因子と相互作用し,産物との間に多−多の関係を結ぶ複数のDNA断片のセットとして「遺伝子」を捉える「全体論的相互作用主義」である.

  • ―人里に出没したクマをめぐる論争を題材として―
    降籏 大樹, 山本 容子
    2024 年 38 巻 4 号 p. 43-48
    発行日: 2024/03/16
    公開日: 2024/03/13
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究では,自然環境にかかわる多様な価値観に注目し,環境倫理学における道徳的多元主義の視点を導入した環境学習プログラムの開発・試行を通して,自然の価値を多元的に捉える環境教育を行う際の,実践的な知見を得ることを目的とした.開発した環境学習プログラムは,高校生を対象としており,人里に出没したクマの駆除をめぐる論争を題材として構成されている.本プログラムでは,生徒が自然の価値を多元的に捉えるための指標として,「環境問題における複雑な問題状況の把握」,「自然環境にかかわる価値の多様性の認識と正当化」,「複数の価値の重ね合わせと統括」の3点を設定し,評価した.その結果,およそ8割の生徒が少なくとも1点の指標を達成し,およそ1割の生徒が3点すべての指標を達成したことが明らかとなった.また,学習者自身が自然環境の価値を多元的に捉えるための指導方略の一つとして,道徳的多元主義の視点の導入が有効であると推察された.

  • 島 絵里子
    2024 年 38 巻 4 号 p. 49-52
    発行日: 2024/03/16
    公開日: 2024/03/13
    研究報告書・技術報告書 フリー

    ミュージアムにおける多感覚体験に関する研究動向を調べるため,文献調査を行った.2023年10月から2024年2月にかけて,データベースISI Web of Science Core Collection,PubMed,ERICをもちいて,キーワード入力( <Museum> AND <multisensory or multi-sensory> AND <experience> )を行い,文献の検索及び収集を行った.ISI Web of Science Core Collectionでは91本,PubMedでは4本,ERICでは5本(査読済み)の文献が表示された.重複して表示された文献を削除し,計96本を収集して分析を行った.空間・環境と身体の関わりの重要性を指摘した研究の中には,まったく反対の主張の展開もみられた.デジタル利用では身体的な体験は得られないというSmith(2020)の主張がある一方で,Fors(2013)およびChen & Lan(2022)は,デジタルの発達によりますます身体的な体験が生み出されると主張した.Chen & Lan(2022)はさらに,デジタル発達により,人々の体験が受動的からアクティブになるということ,博物館体験のインタラクティブ体験,没入型体験の研究をすすめた.デジタル利用では身体的な体験をえることは難しいのか.あるいは,デジタルの発達によりますます身体的な体験が生み出されるのか.ミュージアムと他機関等との連携により,研究と実践をすすめていくことが望まれる.

  • 貝瀬 梨菜, 小倉 康
    2024 年 38 巻 4 号 p. 53-58
    発行日: 2024/03/16
    公開日: 2024/03/13
    研究報告書・技術報告書 フリー

    中央教育審議会答申(2016)によると,「実験結果を分析して解釈・考察し説明すること」などに課題がある.そこで,本研究では,その課題を解決するために,まず,結果と考察の書き方のポイントがまとめられた「結果・考察の書き方シート」及び「結果カード」「考察カード」を作成した.次に,自習時間でそれらの教材と共に使用可能な自習用教材として,「結果・考察自習ドリル」を開発した.教育学部非理科専修の大学生43名を対象にして開発した自習ドリルの有効性を検討した.「結果・考察自習ドリル」の使用前後で,学生がもつ結果と考察を書くために必要な要素に関しての認識の変化について調査した結果,本研究で開発した「結果・考察の自習ドリル」が学習者単独で結果・考察を記述するために必要な要素を理解させることができる可能性が示唆された.

  • ―思考の「不確かさ」に関する動画教材に対する大学生の反応の分析―
    小林 悠人, 小倉 康
    2024 年 38 巻 4 号 p. 59-64
    発行日: 2024/03/16
    公開日: 2024/03/13
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究の目的は,学習者が「不確かさ」に気付き,自他の思考における「不確かさ」に敏感になることができる動画教材を開発し,動画中の「不確かさ」に対する学習者の反応を調査すると同時に,動画教材の有効性を検証することである.濁川・小倉(2022)がまとめた「不確かさ」をもとに,探究過程で現れる「不確かさ」を意図的に含ませた2つの動画と「不確かさ」を解説する動画を作成し,それらを用いた授業を設計,大学生に対して実践し,結果の分析を行った.分析の結果から,動画に対する大学生の反応の実態として,予想・仮説の設定場面において,情報そのものの信憑性について考えることに課題があること,実験結果を懐疑的に捉えずに考察に用いてしまう可能性があることが明らかとなった.また,開発した教材および指導法によって,学習者が「不確かさ」の要素を理解し,自他の思考の様々な「不確かさ」を探すようになったと考えられ,本教材が 学習者が自他の思考の「不確かさ」に気づくことに有効であることが示唆された.

  • 相川 充弘, 飯田 和也, 岩田 真, 福之上 嘉刀
    2024 年 38 巻 4 号 p. 65-68
    発行日: 2024/03/16
    公開日: 2024/03/13
    研究報告書・技術報告書 フリー

    現在,高校「地学基礎」教科書(以下,地学基礎)で取り上げられている重要語(太字で記された語句)は,各教科書ごとに内容や個数が異なる実態がある.そこで地学基礎で必ず学ぶべき重要語は何であるかについて,地学及び理科教育関係者に対してアンケート調査を行った.その結果,「自然との共生」および「岩石鉱物」両分野について,回答者が重要と思われる用語にはばらつきがあり,複数の教科書で掲載されている重要語とは必ずしも一致しないことが明らかになった.

  • 丸山 雅貴
    2024 年 38 巻 4 号 p. 69-74
    発行日: 2024/03/16
    公開日: 2024/03/13
    研究報告書・技術報告書 フリー

    教育実践において,アンケート調査や学習活動の記録等を通じ,テキスト型データを取得できる場面がある.このようなデータに対し,質的研究の手法による分析が従来から用いられてきたが,一方で計量的な分析を組み合わせ,手続きの可視性を高める手法が考案されている.本研究では,我が国における科学教育の実践研究において,テキスト型データの計量的な分析手法を使用した事例について,その動向を整理した.16件の事例を本研究においては抽出し,テキスト型データの取得及び分析の手法を分類した.その結果,科学教育の実践研究では,語間の共起関係を探る手法を中心に使用されていたことが明らかとなった.テキスト型データを用いた研究は,オンライン学習環境の普及等により,さらなる広がりが期待できる.また,自然言語処理技術等の発展が予想されることから,今後の動向を注視しつつ,科学教育の研究においても計量的な分析手法を必要に応じて適切に応用し,学習者の意図等を明らかとしていくことが求められよう.

  • ―提示問題を工夫し,確率を用いた背理法的な思考を図で説明する授業の提案―
    島 智彦
    2024 年 38 巻 4 号 p. 75-78
    発行日: 2024/03/16
    公開日: 2024/03/13
    研究報告書・技術報告書 フリー

    数学Ⅰで新たな学習内容となった「仮説検定の考え方」の指導の難しさが指摘されている.要因として,教科書で扱われている1つの例題において,生徒にとっての理解が難しいと考えられる学習内容,(1)割合と起こりやすさの違い,(2)確率を用いた背理法的な思考,(3)求めたい事象以上の確率を求めること,(4)有意水準の設定,の4点が内包されていることが考えられる.本研究では,数学A「場合の数と確率」の既習を前提として,上記4つの学習内容の難しさを解消する授業を提案することを目的とする.次の2点の工夫を行う.1点目は,問題設定を簡単にした補題で(2)(4)の説明や確認を行ってから,Fischerが提示したミルクティ問題を主問題として(1)(3)についての説明を加えていくことである.2点目は,(2)の確率を用いた背理法的な思考の理解を助けるため,図を用いて説明を行うことである.

  • 小山 和男
    2024 年 38 巻 4 号 p. 79-82
    発行日: 2024/03/16
    公開日: 2024/03/13
    研究報告書・技術報告書 フリー

    関数の概念に初めて出会う生徒たちを対象として,数学・理科の横断的学習を実施し,理科の実験が関数の学習にどのように効果をもたらすかを探索した.関数のイメージに適した実験教材を用い,比例・反比例以外の関数も含めて授業実践をし,関数概念の定着度を調査した.一連の授業では,因果関係を意識させることを目的として,関数の入力・出力のイメージを重視した.このイメージに基づいて実験や分析を進めることで,独立変数・従属変数・定数の区別が明確になり,関数一般の概念と比例特有の性質との違いが理解しやすくなるという効果が確認できた.また,入力・出力のイメージに基づく関数一般の理解が自然現象の理解,特に因果関係を意識した理解に繋がるという示唆的結果が得られた.

  • 花木 良
    2024 年 38 巻 4 号 p. 83-88
    発行日: 2024/03/16
    公開日: 2024/03/13
    研究報告書・技術報告書 フリー

    西郡は新聞記事を考察し,大学入試全般について「入試ミス」を分類するための枠組みを提案している。本研究の目的は,数学の出題ミスをなくすための留意点と施策を提案することである。研究方法は,過去の数学に関する大学や専門学校の入学試験問題の出題ミスを新聞記事から抽出をし,原因を考察する。新聞記事の分類結果は,作問ミスが56%(44件),範囲外が30%(24件),採点ミスが9%(7件),不明が5%(4件)であった。出題する際の留意点を,(1) 作問ミス,(2) 誤字脱字,(3) 出題範囲,(4) 採点ミス,(5) 口述試験でまとめた。特に,(3) 出題範囲では,平成30年度の学習指導要領に基づく教科書の中に「オイラーの多面体定理」や「二元一次不定方程式」について記載のないものがあることに留意すべきである。出題ミスをなくすための施策では,今後の学習指導要領では扱う公式や用語を明確化すべきであること,大学や専門学校の運営者は数学入試に関わる人材と時間を確保していくことが大切であることを提案する。

  • 渡辺 信, 青木 孝子
    2024 年 38 巻 4 号 p. 89-92
    発行日: 2024/03/16
    公開日: 2024/03/13
    研究報告書・技術報告書 フリー

    数学の試験時間に行うことは数学の問題であると言われれば,何も言うことはない。しかし,今回の大学入学共通テスト問題数学Ⅰ・Aの問題では,理科の問題なのではないかと思われる問題があった。また化学の問題を見ながらあまりにも誤差のないグラフは数学として作り出されているデータを使っているのではないかと思った。数学と理科の境界線はないかもしれないが,科学教育としての学問の細分化の是非を含めて話題として理科の問題か数学の問題かを検討したい。学習は創造性育成が問われる。

  • 猪本 修
    2024 年 38 巻 4 号 p. 93-98
    発行日: 2024/03/16
    公開日: 2024/03/13
    研究報告書・技術報告書 フリー

    GIGAスクール構想の進展により,タブレット端末を活用した理科授業が中学校においても拡がりつつある。中学校理科のうち音や物体の運動の単元では,タブレット端末を用いて,音の波形を観察したり,物体の動きを記録したりすることで,従来の授業では難しかった可視化や定量的な分析が可能になり,生徒の理解を深めることができる。これらの実験を行うためには,Phyphoxのような,物理教育用途に特化したアプリの使用が有効である。このアプリによって,動きのあるものを観察したり,肉眼では見えないもの,分かりにくいものを可視化したり,また実験を定量化することができるため,生徒の主体的な学習と科学的思考力の育成に役立つものと考えられる。本稿では,音による現象と物体の運動の単元におけるPhyphoxを用いた実験の授業実践例を示し,ICT活用の具体的方策を提案する。

  • 内田 保雄, 坂本 眞人
    2024 年 38 巻 4 号 p. 99-102
    発行日: 2024/03/16
    公開日: 2024/03/13
    研究報告書・技術報告書 フリー

    文部科学省によるプログラミング教育推進の取り組みにおいては,2020年度に小学校,2021年度に中学校でプログラミング教育が必修化され,また高等学校では2022年度からプログラミング教育を含む必履修科目「情報Ⅰ」が設定された.さらに,2024年度からは大学入学共通テストの教科として「情報」が加わることになっている.このような状況において,共通教科「情報」の重要な狙いの一つである情報活用能力育成のための指導法の確立が重要と考えられる.そこで,本研究ではプログラミング教育の指導に焦点を当てた情報科教育法について提案する.共通教科情報科の位置づけは各教科で必要とされる情報活用能力を育む基盤としての情報教育を担うものである.本稿では,この狙いをくみ取って構成した,M県教育委員会主催免許法認定講習「情報科教育法Ⅰ」および「情報科教育法Ⅱ」における実践について報告する.

  • 高藤 清美
    2024 年 38 巻 4 号 p. 103-106
    発行日: 2024/03/16
    公開日: 2024/03/13
    研究報告書・技術報告書 フリー

    2020年度から小学校でのプログラミング教育の全面実施が始まった。小学校でのプログラミング教育では,実体験を通してプログラミング的思考(論理的思考)を育成することや,コンピュータの動作への気付きや仕組みを理解することが主な目的とされている。本研究では,近年入手が容易となった小型人型ロボットを活用したプログラミング教育を提案し,通常のプログラミングとの比較および関連付けをおこない,教育現場で実施可能な教育用カリキュラムや教材の開発を目指す。子どもたちは,題材が人型であることから,自分や同級生の動きを参考にプログラムを考えることが可能である。また,発話や音声認識の機能を利用できるロボットおよび拡張パーツの利用も容易となっていることから,実世界と連携するロボットを含む情報システムの提案も可能となり,学習の深化に大変有効だと考える。本研究は,通常のプログラミングに必要な要素と小型人型ロボットのプログラミングの要素を比較検討し,明らかにするとともに,学習の深化を担保できるカリキュラムや教材を提案する計画である。本発表では,通常のプログラミングと小型人型ロボットのプログラミングの比較検討をおこなった結果を報告する。

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