2025 年 39 巻 4 号 p. 29-32
今日の社会における複雑な現象は,複雑な対象を複雑な様相を呈したままでしか取り扱うことができない.この事態は数学教育にとって喫緊の課題であり,そのような対象を目の前にしたときに,これまでの解決を前提とする数学教育から解決を前提としないそれへと,舵を変える必要がある.こうした課題意識の下,ネガティブ・ケイパビリティという資質・能力に着目し,確率教材を事例にその様相を提示することを本稿の目的とした.確率教材として火曜日生まれ問題を取り上げ,情報が同じであったとしてもその情報の得られ方が異なれば,確率が異なる場合があることを示した.このことから,火曜日生まれ問題が解決不可能であることがわかり,この経験を子供にさせることができれば,未知からのアフォーダンスに対する消極的に凌ぐ態度や無条件の積極的関心,そしてこれらを回収すると,そこにNCが露わになることを提示した.