2025 年 39 巻 4 号 p. 47-50
本研究では高校の文理選択前後における科学に対する意識変化を調査し,理系選択者に特有な意識変化の特徴を見出すことで今後の理数教育の在り方を検討することを目的とした.今回の結果では,高校入学直後から文理選択までの約8ヶ月の間に科学に関する仕事に就かないと決断した生徒が有意に増加した.また,文系選択者は理系選択者に比べて「自分で実験することが好き」という生徒が有意に減少していたことがわかった.さらに「現代人は科学技術に依存しすぎている」という項目に対し,文系選択者は同意する傾向が強まる一方で,理系選択者はこれに同意しないと回答する生徒の割合が増加した.文理選択後の2年次には,理系選択者において「理科の学習は面白い」「理科を学ぶことは受験に関係なくても重要である」と回答した割合が有意に増加した.これらの結果から,文理選択前である1年次に生徒実験を増やし,科学技術の活用に好意的な意識を持たせる教育活動を実施することで,理系選択者が増加する可能性があると示唆された.