抄録
本研究では、まず理科授業に関わる学習者の知識を、名辞的な側面に限定して捉えるのではなく、イメージ、エピソード、知的技能、運動技能などの他の諸要素との集合、あるいはそれらの様々なリンクのパターンとして捉える考え方 (White, R. T., 1989) を採用し、学習者の preconception を明らかにするとともに、その構成要因の同定及びそれにもとづいた多様な認識活動の記述の可能性を示した。また、学習者の問題解決の過程を、宣言的知識と手続き的知識の両者が用いられた結果として捉えるとともに、学習者の Preconception は、彼らにとっては既にあたりまえのこととして、問題解決の際に、宣言的知識の操作に用いられる手続き的知識であると考えることにより、彼らの preconception の変容の過程を、手続き的知識の表象形式であるプロダクション (if〜then) によって記述することができた。