中学校数学科における文字式の論証の中で指導される数学的思考の「よさ」を生徒がどの程度捉えているかを追求した。「よさ」を測定するために,論証過程(表現過程,変形過程,結果過程という3つの下位過程)における推論の分析を行い,7問からなる課題を構成した。さらに「具体的な数による帰納的説明」と「文字式を使った論証」の2種類の解決過程を設定し,授業実施後の保持調査を兼ねて,その各々に対する生徒の「よさ」の感じ方の測定を行った。その結果,(1)繰り返して測定対象とした課題よりも新しい課題に対して「よさ」を感じること, (2)課題によっては「具体的な数による帰納的説明」が有効なこと,(3)保持される「よさ」と,そうではない「よさ」があること,(4)成績中位群,下位群については「具体的数による帰納的説明」と「文字式を使った論証」の違いを認識していないこと,が示された。