堆積学研究
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論説
High-resolution sequence stratigraphy in an incised-valley system on the basis of sedimentary organic matter, sulfur content and fossil diatom: An example from Miocene to Pliocene Tatsunokuchi Formation, Iwate Prefecture, Northeast Japan
Mamiko YoshidaHirobumi InoueKoichi HoyanagiYukio YanagisawaMasayuki OishiHiroo Yoshida
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2011 年 70 巻 2 号 p. 63-79

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抄録
岩手県南部の北上市に分布する中新統~鮮新統の石羽根,竜の口,本畑層は,エスチュアリーと河川環境での堆積を示している.また,1回の海水準上昇と引き続く低下で堆積した地層で,低海水準期堆積体,海進期堆積体,高海水準期堆積体に区分できる.その周期は約100万年と推定できる.河川成堆積物からなる低海水準期堆積体では陸源有機物片を多く含み,有機物は低い安定炭素同位体比(δ13Corg)を示す.引き続くエスチュアリー環境を示す海進期堆積体では,上方に向かって,海棲有機物が増え,δ13Corgの値が大きくなり,さらに全有機炭素量も増加する傾向にある.海進初期ではこれらは,小さな増減を4回繰り返しているが,やがて最大海進面に向かって安定して増加するようになる.最大海進面より上位の高海水準期堆積体では陸源有機物量が増大し,δ13Corgと全有機炭素量は減少し,陸域からの物質供給が増加したことが示される.珪藻化石の淡水種,汽水種,潮間帯種,沿岸性種,外洋種の比率変化も同一の海進海退の繰り返しを竜の口層中に記録している.したがって,竜の口層の海進期堆積体は短周期の4回の海進海退と引き続く海進から構成され,一方,高海水準期堆積体は1回の海退を示す.これらは数10万年周期の海水準変動に対応するかもしれない.
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© 2011 The Sedimentological Society of Japan
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