堆積学研究
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論説
東部南海トラフ海域の堆積物に含まれるメタンハイドレートの分解に伴う選択的脱水とその意義
伊藤 拓馬皆川 秀紀
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2013 年 72 巻 1 号 p. 3-12

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抄録

東部南海トラフ海域から採取されたメタンハイドレート(MH)を含む堆積物の生成および分解が含水率に与える影響を議論した.堆積物は 3つのタイプに分けられた.タイプ1 は,中央粒径が 20μm より粗粒で逆級化構造と正級化構造を示す.タイプ2 は,中央粒径が 20μm 未満の細粒な堆積物からなり正級化構造を示す.タイプ1 とタイプ2 は,いずれも混濁流堆積物である.タイプ3 は,中央粒径が 10μm 程度でほぼ一定な細粒堆積物からなり,半遠洋性の堆積物と判断される.MH 分解後のタイプ1の堆積物については,10%未満の含水率と粘土・シルト・砂含有量との関係が水飽和試料のそれとは異なっていた.このことは,含水率が 10%未満のタイプ 1の堆積物に選択的な MH の集積があり,MH 分解過程で脱水作用が起きたことを示唆している.本研究では,MH 分解後に最大 15%の含水率が減少した.選択的脱水による含水率の低い堆積物は,かつて MH を含んでいた地層を認定するためのひとつの基準となりうる.

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© 2013 日本堆積学会
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