抄録
アラビア湾及び竹富島から採集されたサンゴ礁泥及びこれに類似する炭酸塩堆積物について, これらからシルト分と粘土分を分離し, X線粉末回折法によって炭酸塩鉱物組成を検討した. その結果, 二つのタイプのサンゴ礁泥がアラビア湾に分布していることが解った. まず, 一つのタイプはアラゴナイト質のサンゴ礁泥で, アブダビ付近の礁湖内に分布している. この泥では, アラゴナイトの含有量は, 常に粘土分の方がシルト分に比べて高くなる傾向がある. もう一つのタイプは, 高マグネシウム方解石 (HMC) 質のサンゴ礁泥で, ムバラス浅瀬の礁湖内に分布している. この泥では, HMCの含有量は, 常に粘土分の方がシルト分に比べて高くなる傾向がある. これら両者礁湖の沖合いのアラビア湾では, 沿岸の礁湖から供給されるサンゴ礁泥は, 湾内のココリス軟泥によって薄められ, 低マグネシウム方解石 (LMC) の含有量が高くなる. 竹富島のサンゴ礁泥では, HMC質のサンゴ礁粘土の封入物が下位のサンゴ礁石灰岩に無数に含まれ, この封入物が浸食され上位のサンゴ礁泥にHMC質の粘土を供給していることが知られている. 同じようにムバラス浅瀬礁湖内のサンゴ礁泥でも, 周囲のサンゴ礁に含まれるHMC質のサンゴ礁粘土の封入物が浸食されて, HMC質の粘土分を供給しているものと推定される.