堆積学研究
Online ISSN : 1882-9457
Print ISSN : 1342-310X
ISSN-L : 1342-310X
堆積学におけるガスハイドレート科学の展望
地球環境科学のパラダイム
松本 良
著者情報
ジャーナル フリー

2004 年 58 巻 58 号 p. 45-56

詳細
抄録

メタンガスと水とからなる氷状固体物質ガスハイドレートは, 地球表層における巨大炭素シンクとして, 地球環境の変動に強い影響を与えていると考えられる. 炭酸塩堆積物に記録された海洋の溶存炭素の同位体組成変動から, 海洋無酸素事件や生物の大量絶滅はガスハイドレート分解によって引き起こされたと指摘される. 最近, 深海底でのガスハイドレート分解が大気海洋系に効率的にメタンを供給する仕組みは潜水艇を用いた実験で明らかにされた. いっぽう, ガスハイドレートの分解が大陸斜面堆積物を不安定にし, 大規模な地滑りが起きた例も多数報告されている. いま, 堆積学はグローバルな地球環境科学へとその重心を移しつつあり, 環境変動要因として強いインパクトをもつガスハイドレートへの理解は不可欠である.

著者関連情報
© 日本堆積学会
前の記事 次の記事
feedback
Top