堆積学研究
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鹿児島湾における環境指標としての堆積有機物および硫化物
Nguyen Dung Thi Phuong前田 広人田岡 洋介日高 正康吉川 毅坂田 泰造
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2005 年 62 巻 62 号 p. 17-30

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抄録

富栄養化に伴う底質の動態を明らかにするために, 種々の指標を比較して鹿児島湾における底質の特徴づけをおこなった. 本研究では, 富栄養化の程度を知る指標として堆積物中の有機物と酸可溶性硫化物 (AVS) の分析を行った. 2001年7月と2002年8月に堆積物試料の採取を行った. 底泥の有機物とAVS濃度は均一ではなく高濃度域がみられ, その傾向は2回のサンプリングについてほぼ同様であった. 強熱減量 (IL) は1.1-13.4%で, 有機炭素 (TOC) および有機窒素 (TON) はそれぞれ, 0.2-2.3%および0.04-0.22%の範囲で変動した. AVS濃度は0.01-2.5mg/g (乾泥) の範囲であり, 湾奥の最深部で高濃度であった. TOCおよびTONの濃度がIL濃度と平行して増加したことからTOCとTONがILと相関していると考えられた. 湾奥部では, 底泥におけるIL, TOC, TON濃度は泥深とともに減少した. 一方, 湾央部の鉛直分布については, これらの指標の大きな変動は見られなかった. 以上の結果は鹿児島湾における底泥の水平および鉛直的な分布の特徴を明瞭に示している. さらに有機物とAVS濃度が鹿児島湾の環境状態を知る指標として使用できることが示された.

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© 日本堆積学会
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