2024 年 1 巻 p. 48-58
本稿は、コーダのバイリンガリズムに対する意識に関する調査である。具体的には、コーダは自分の子どもに手話を身につけて欲しいと考えているのか、また、実際に自分の子どもに手話を教えようという意欲はどの程度なのかを調査した。その結果、約86%のコーダが、バイリンガルであることの有益さを認め、約79%のコーダが、自分の子どもに手話と日本語のバイリンガルになって欲しいと考えていることがわかった。しかし、実際に自分の子どもをバイリンガルに育てようとしているかという問いに対しては、「はい」が約29%に留まった。その要因として、ろう者である祖父母と接することで無理なく手話を身につけて欲しいというコーダの希望が確認された一方で、現実問題として自分の子どもが手話を使う機会に恵まれていないという言語環境の課題があげられた。また、手話を学ぶにあたってはコーダの子どもの意志が尊重されるべきであり、強制的に手話を教えることは好ましくないという考えの影響も見られた。