手話・音声言語研究 関西学院大学手話言語研究センター紀要
Online ISSN : 2759-355X
論文
ろう児をもつ親への手話指導法に関する研究
前川 和美
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2024 年 1 巻 p. 33-47

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抄録

 医療機関で聴覚障害が発見された子どもの約9割の親は聴こえる者(以下、聴者)である。医療関係者や早期療育担当者の多くは、ろう者や手話という言語に対する知識が乏しいため、聴覚障害者を障害と位置づけ、聞こえない、聞こえにくいという病理的視点のみから話を聞かされる。ろう児をもつ聴者の親が手話学習を必要としたとき、地域の手話奉仕員養成講座や手話サークルなど、手話を学ぶ機会はあるが、これらは手話通訳者養成のためのものが多く、家庭内で日常的に手話を必要とする親のニーズに適しているとは言い難い。そこで本研究は、乳幼児期の聴覚障害児(以下、ろう児)を持つ聴こえる親(以下、聴者の親)に対し、異文化接触や社会・文化的な視点を加味した手話指導法を構築することを目的とする。まず、研究1では、手話指導の観点からカリキュラム改訂を3度おこなった。その結果、4回の講義テーマを含めた、計19回の講座カリキュラムを作成することができた。続いて研究2では、研究1で作成したカリキュラムを用い、ろう学校に通う乳幼児を持つ聴者の親を対象に手話指導およびアンケート調査を実施し、その効果を調査した。その結果、手話で育てることの必要性やナチュラル・アプローチ手話教授法の有用性を確認できた。

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© 2024 関西学院大学 手話言語研究センター
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