土と微生物
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アカウキクサ(Azolla)の熱帯農業における利用
渡辺 巌
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1978 年 20 巻 p. 1-10

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抄録

アカウキクサ(Azolla)は温帯,熱帯の池,水田に広く分布する水生羊歯植物でその上面葉下部の空腔中に窒素固定性藍藻Anabaena azollaeが共生し,無窒素培地で生育することができる。国際稲研究所内の圃場で1年間連続して22回のAzolla pinnataを栽培したところ,330日の生育期間で総計ha当り450kgの窒素をAzolla中に貯えることができた。この窒素固定力は熱帯マメ科牧草の窒素固定量年間最高値に近いものであり,共生藍藻細胞窒素当りの固定力もマメ科植物根粒中のバクテロイド細胞の値をはるかにこえるものである。Azollaは概して温帯性の種と分布が多いが,熱帯に分布するA. pinnataでも日平均気温22-27℃が最適で日最高気温の月平均が32℃をこすと,生育がおとろえる。高温に対する抵抗性が弱いことが熱帯での利用で問置になる。りん酸肥料の施用はAzollaの水田での生産にかかせない,過燐酸石灰の分施をすればP_2O_5 1kgで2kg以上の窒素をAzollaは生産できる。Azollaは中国,ベトナムでは広く水田緑肥として田植前後に水田で栽培されまた,堆肥源,動物飼料としても利用されている。国際稲研究所での近年の試験でも緑肥としての有効性が確認されたし,アジア諸国でもその利用が注目されはじめている。

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