土と微生物
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野外における微生物の検知と制御(組換え微生物の農業利用-野外での利用を中心にして-)
和田 秀徳
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1988 年 32 巻 p. 3-13

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抄録

野外における微生物の検知と制御は,組換え微生物の野外放出問題を解決するのに必要な主要技術と見なされ,近年,多くの人々の注目を受けるようになった。一方,野外において特定の微生物とその遺伝子が野外でどのような挙動をするかを明らかにすることは,土壌微生物個生態学に課せられた現代的研究課題である。この研究課題が十分に解明されれば,組換え微生物の野外放出問題に対して土壌微生物学が大きく寄与できるだけでなく,"分子生態学"を確立し,一般微生物学の発展にも大きく寄与できるはずである。しかし,野外における組換え微生物の検知と制御に関する知識と技術は現在のところ極めて不足している。この現状を打破する一つの方法として,扱い易い非組換え微生物につき野外における微生物の検知と制御に関する知識と技術を高めることにした。すなわち,新たに分離同定された好気性BHC分解菌を組換え微生物のモデル微生物として採用することにした。この微生物は,非殺菌土壌中でも,BHCを与えれば選択的に増殖でき,土壌1g当り,数匹程度の感度で,正確に,しかも容易に測定できた。現在,この微生物について,土壌中での挙動,菌数の制御,遺伝子組換え,微小生息部位,などの研究を進めている。この研究で得られた知見と技術は,土壌微生物個生態学に寄与すると共に,そのままあるいは多少変更した後に,組換え微生物の野外放出問題の解決に利用できると期待している。なお,「DNA組換え体の野外利用に対する諸外国の対応」を資料として以下に示す。

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