土と微生物
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植物根系圏と菌根菌の分布(共生土壌菌類と植物の生育)
佐久間 大輔
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1994 年 44 巻 p. 25-31

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抄録

森林群集内部での外生菌根共生の空間分布を知るために,その基礎単位として根系圏を重要視した。根系圏は葉群が構成する樹冠に相当する,根系が地下に形成する構造である。まず,宿主の根系が外生菌根菌のハビタットとして重要になる場合を孤立木の根系圏を用いて示し,さらに林内であっても複数の外生菌根性樹種が存在する場合には宿主特異性に応じて同様の現象が見られることを,アカマツ林内に孤立したコナラとその根系圏にのみ子実体形成したチョウジチチタケの例から示した。宿主の根系圏に応じたこのような菌根菌の分布は,これら既存菌糸が実生への感染源でもあるため,重要な影響を持つだろう。さらに,外生菌根性樹種以外の植物も外生菌根菌子実体との分布関係が無関係(独立)ではなく,負の相関が見られることを示し,これらの植物の根系圏も外生菌根菌にとって影響を及ぼしうることを指摘した。樹冠と同様,林内を複雑に分割する根系圏は外生菌根菌に多様なハビタットを提供し,その多様性や共存機構にも関与すると考えられる。

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