土と微生物
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モデル土壌中における土壌伝染性病原菌の個生態研究 : ダイコン萎黄病菌とトマト青枯病菌を例に
豊田 剛己
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2005 年 59 巻 1 号 p. 45-52

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抄録

病害防除には病原菌の生態を詳しく知ることが極めて重要である。そこで,モデル病原菌としてダイコン萎黄病菌(Fusayium oxysporum f. sp. raphani)およびトマト青枯病菌(Ralstonia solanacearum)を取り上げ,土壌中における個生態(オートエコロジー)に関する著者らの研究を紹介した。両病原菌とも,土壌あるいは植物根への定着には多様な微生物群集により抑制されることがわかった。また,個々の微生物種の影響を見たところ,萎黄病菌では同属の菌株が,また青枯病菌の場合には同種のさらに同じtRNA配列タイプに属する菌株が顕著に生育を抑制した。また,遺伝的に近縁でなくとも,病原菌の生育を抑制できる菌株も存在した。病原菌の土壌・植物根面への定着には土着微生物群集が大きく影響することが明らかにされ,それら土着微生物群集を変化させることで,病原菌の定着を抑制し,病害被害を軽減できる可能性が示唆された。また,拮抗菌の場合でも,その植物根への定着を抑制する"拮抗菌の拮抗菌"の存在が示唆されたが,協同的に拮抗菌の定着を促進する菌株もあった。

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