2007 年 61 巻 2 号 p. 135-146
土壌の凍結融解をめぐる土壌微生物学研究の進展について,1992年以降の成果を中心に論じた。土壌が凍結融解しても土壌中の微生物の多くが生残することに関して,微生物と土壌の両者に0℃以下の温度においても液体の水(不凍水)を生成するメカニズムがあることを示した。不凍水の評価方法として,誘電緩和法や核磁気共鳴法に基づいた機器分析と熱力学に基づいた溶液平衡計算を紹介した。また,微生物の土壌中の微視的住処を特徴づける方法として,土壌水分特性曲線の解析に基づいた土壌の孔隙径分布の評価の実例を紹介した。最後に,晩冬から初春にかけて土壌の凍結融解と関連して見られる亜酸化窒素発生について,フィールド観測と室内における検証実験の成果を総括し,凍結中および融解した表層土壌で脱窒が誘導されて亜酸化窒素の生成が起こる機構を整理した。冬季ないし寒冷地の土壌中での物質循環の解明を通して,土壌微生物群集が果たす地球システムにおける役割の解明が期待される。