土と微生物
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土壌微生物のグルコース利用効率に関与する要因の検証
沢田 こずえ舟川 晋也小崎 隆
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2011 年 65 巻 1 号 p. 41-48

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抄録

土壌微生物のグルコース利用効率は,有機物循環モデルにおけるパラメーターを見積もるために重要である。グルコース利用効率は,純粋培養微生物では約60%であることが知られている一方,土壌微生物においては,広い範囲の値が報告されている。本稿では,その要因を,全土壌に共通のものと,土壌の性質に由来するものに分けて検証した。共通要因として,(1)計算方法,(2)培養時間,(3)バイオマス炭素由来呼吸の影響.(4)添加グルコース炭素濃度が考えられた。特に(4)において,グルコース利用効率は,添加グルコース炭素濃度が増加するにつれて,ある閾値までは約80%と一定で,閾値を超えると徐々に低下することが明らかになった。一方土壌の性質に由来する要因として,(1)酸性や重金属ストレス,(2)養分濃度,(3)糸状菌と細菌の割合,(4)粘土含量が考えられた。しかし,これらの要因のうち,明らかにグルコース利用効率に影響を与えるものは存在しなかった。以上から,基質濃度が低い疑似定常状態では,基質利用効率を考慮しないこれまでのモデルで微生物呼吸量は十分予測できるが急激な基質添加がある状況下では,従来のモデルでは微生物呼吸量が過小評価される可能性があることが示唆された。

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